Fintechが銀行APIで経験した事業者間データ連携の課題
落合:データを競合に渡したくないという議論は銀行APIでもあったと思います。どのような経緯で受け入れられていったのでしょうか。
瀧俊雄氏(以下、敬称略):銀行口座へのデータアクセスと決済指示の基盤を外部開放することを義務化する制度が欧州ででき、部分的に日本に輸入されることで始まりました。最初は自社の知財や情報が外部に流れるのではという懸念がありました。どのようにして懸念を乗り越え、制度を作っていったかというと、銀行など元々金融業界にいる企業より、他領域の企業の方がいいサービスを生み出せるという考えになったからです。銀行APIの普及は、「クローズドなイノベーションよりもオープンイノベーションの方がユーザー利便を提供できる」という考えの上に成り立っています。MaaSも、ユーザーが移動、交通、居住にどのようなペインを抱えていて、それが交通事業者だけで解消できるものなのか、外部の事業者も交えた方が上手くできるものなのか、という視点が必要なのではないでしょうか。