リテールAIプラットフォームプロジェクト「リアイル」は、日本の小売・流通業界人口減による市場縮小や140兆円規模の市場のうちの約3割のコストが最適化されない「ムダ・ムラ・ムリ」の存在など、さまざまな社会課題に直面している。その中で、小売・卸・流通・メーカー・冷蔵ショーケースメーカーの各プレイヤーが連携し、AIによって得られたデータをうまく活用していくことで、流通業界の構造改革による社会課題の解決、消費者の購買体験の向上など“流通情報革命”を起こすことを共通の目的として発足した。
本発表会では、プロジェクトが発足したその背景や小売・流通業界のトップランナーとして目指すべき社会、実際に活用されているリテールAI技術、消費者に与える購買体験の変化等について、各社のリテールAI技術を活用した事例とその成果が発表された。
各社の発表内容
株式会社Retail AI 永田 洋幸氏(代表取締役社長)
トップバッターとして登壇した本プロジェクトのリーダーである永田氏は、「リテールAIプラットフォームプロジェクトが目指すプロジェクトビジョン」について発表した。
永田氏は「本プロジェクトの目的は、実際のオペレーションを変え、数値実績を出すもの。それを実現するために店舗とデータを持つトライアルを主体とした参画企業との実際の『流通情報革命』が重要です」とプロジェクトが発足した目的と意義を改めて示した。
そして、「それには、Retail AIが提唱する、テクノロジー優先ではなく、実際に店舗がどのようなオペレーションで動いているかということを重要視する、オペレーションドリブンの考え方が必要です。事実、私自身もシリコンバレーにいた際に、テクノロジー優先で消えていったビジネスがたくさん見てきました。だからこそオペレーションを重要視しなければならないと思っています。我々は流通産業にあるムダ・ムラ・ムリを、AIで改善していくことでお客様の買物体験を良くしていきます。流通産業の変化は小売だけ、メーカーだけの部分最適だけでは効果を発揮せず、全体最適が可能であるプラットフォームとして業界全体へ波及し流通産業の変化を促す行動につながっていくことが必要であると考えています」とリテールAIを進めていくうえで大切になる考え方と、業界全体で取り組むことの重要性を述べた。そして、「Retail AIはオペレーションドリブンの考えのもと、リアル店舗で商品と個人をつなぐデジタルトランスフォーメーションを行い、小売業にデータを生み出します。そして、データを主体に新たな価値を創出することで、買い物体験を変えていきます。買い物体験を変えるには、メーカー・卸・ファシリティ・物流と小売業が今まで以上に連携することが重要です。本プロジェクトはそういう趣旨に賛同してくださった皆様がオープンイノベーションで産業を変えることを目的に集まりました」とし、プロジェクトが目指すビジョンを語った。
さらに永田氏は「これから一緒に業界を変えていく仲間が発表していくことが『トライアル長沼店』に導入され、4月24日(金)にリニューアルオープンいたします。我々は『トライアル長沼店』で実績をつくり、リテールAIがこれからの小売にとって必要不可欠であることを実証し続け、導入店舗を拡大していきます」と語り、プロジェクトが培ってきたノウハウが「トライアル長沼店」に集結することを明らかにした。
サントリー酒類株式会社 中村 直人氏(営業推進本部 兼 広域営業本部 部長 リテールAI推進チーム シニアリーダー)
つづいて登壇したのは、中村氏は「デジタルやIoTテクノロジーを取り入れた「スマート」な買い物とライフスタイルの提供について」発表。
日本ハム株式会社 小村 勝氏(マーケティング推進部長 兼 新市場創造部長)
3番手に登壇した小村氏は、「リテールAIを組み込んだマーケティングプロセス確立による顧客満足度向上と流通フロー最適化による業務効率化チャンスロス削減について」を発表。
株式会社日本アクセス 今津 達也氏(マーケティング部 部長代行)
4番手に登壇した今津氏は、「リテールAI活用によるデイリー売場分析と分析データ活用によるチャンスロスを防ぐ取り組みについて」を発表。
株式会社ムロオ 山下 俊一郎氏(代表取締役社長)
つづいて登壇した山下氏は、「メーカー、小売、卸 共同配送センターの設置で変わる日本の物流について」を発表。
フクシマガリレイ株式会社 福島 豪氏(専務取締役 営業本部長)
最後に壇上へ上がった福島氏は、「AIファシリティ企業として取り組むリテールAI」を発表。
本プロジェクト名である「リアイル」は、絵空ごとではなく、現実のものとして実現した“リアルなAI”という意味と、“リテールAI”をかけ合わせた造語。また、バーチャルではなく、“リアルで愛のあるプラットフォーム”という想いも込められているという。