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失敗しない新規事業開発の進め方

新規事業開発に挑み続けるための“撤退基準”の定め方──成功に向けた「健全な多産多死」を実現するには

第5回

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企業内新規事業とスタートアップの違い

 第2回でもご説明した通り、新規事業開発は既存事業とは大きく前提が異なり、高い不確実性をともなう挑戦です。様々な外部環境/内部環境の変化に対応しながら、次々に表出する事業課題に粘り強く向き合い、スピーディに乗り越えていかなければなりません。当然、これまでの記事でご紹介してきたような、新規事業開発の不確実性をマネジメントし、少しでもリスクを低減するための方法論やアプローチ、ノウハウや知見などを活用することで挑戦の質を高めることは可能です。ただ、それでもなお大半の新規事業は失敗に終わるのが現実です。そのため、多くの事業を産み、大半が死ぬ中で僅かな成功が生き残る「多産多死」を前提に、限られたリソースの中で如何に「質の高い挑戦を数多く、継続的に産み続ける」ことができるかが、最も重要であるといっても過言ではありません。

 私自身も、企業内新規事業の責任者やスタートアップ起業家、投資家という様々な立場から30以上の事業を手掛けてきた中で、多くの事業の撤退=事業のクローズやサービスの終了も経験してきました。成功の定義や解釈にもよりますが、その中で自信を持って成功したと言えるものは3つ程度です。また、多くの日本企業の新規事業開発を支援させていただく中でも同様に、成功の数を遥かに上回る撤退や失敗に立ち会ってきました。この経験から、企業内新規事業とスタートアップでは、目指す成功の定義や多産多死の実現アプローチなどにおいて前提や考え方が大きく異なり、その差異を踏まえて取り組む必要があることを痛感したのです。

企業内新規事業とスタートアップの違い企業内新規事業とスタートアップの違い

 スタートアップの場合、基本的には1社で1つの事業やプロダクトにすべてのリソースを集中させ、短期間で急激な成長/非連続な成長を実現することを目指します。つまり、新規事業開発のみを行っている企業体であるケースが大半です。これは、資本力のないスタートアップが投資家からエクイティ(株式)による資金調達を行い、時価総額の最大化とIPO・M&AなどのEXITによるキャピタルゲインで報いることを前提にした経営が行われていることに起因します。

 また、日本国内だけでも数千〜1万超とも言われるスタートアップ企業と、そこに資金を供給するVC/CVC、インキュベーターやアクセラレーター、メディアやコミュニティ等によって形成される全体のエコシステムが日本でも形成されつつあり、1社ではなく、このエコシステム全体で「多産多死」を実現しています。この膨大な挑戦の中から、僅かな成功例としてメルカリ等のメガベンチャーが輩出されているのです。華々しい成功や大型の資金調達などがメディアを賑わすことが多いですが、その裏には数千以上の撤退や失敗があるのも事実です。先人たちの挑戦と失敗、その経験から得た学びがコミュニティやメディアを介して共有され、後に続くスタートアップの糧となり、次なる挑戦の礎となっているのです。

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この記事の著者

北嶋 貴朗(キタジマ タカアキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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