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失敗しない新規事業開発の進め方

新規事業開発やイノベーション創出の再現性を高める「インキュベーション戦略」と「IRM」とは?

第6回

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 前回は、新規事業における「継続/撤退の判断基準と意思決定における考え方やポイント」について触れつつ、企業が新規事業の成功確度を高めるために重要な「健全な多産多死」を実現するためのアプローチについてご紹介しました。最終回となる今回は、これまでの連載内容を総括しつつ、日本企業が新規事業開発を通じてイノベーションを起こし得る組織に変革するためのエッセンスやアプローチを提言していきます。

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ビジョンに基づく新規事業開発の方針や戦略があるか?

 前回も説明したとおり、新規事業開発という不確実性が高い挑戦においては、良質な多産多死を前提に取り組む必要があります。その過程においては、なるべく質の高い挑戦を量産し、かつそれを中長期に渡って継続していかなければ、再現性が高い新規事業開発やイノベーション創出の活動を実現することはできません。しかし、第1回でも触れたとおり、実際の新規事業開発の現場においては、会社全体として新規事業開発に取り組む目的や意義を明確にしないまま新規事業開発に着手してしまい、挑戦の質が低下する、結果として迷走して成果が出ないという課題が数多く発生しています。そうなっては、挑戦の質を高め、中長期的な目線で投資判断や新規事業開発の活動を行うことは極めて困難になります。

 この状態を脱して再現性の高い新規事業開発やイノベーション創出活動を実現するために最初に取り組むべきは、個別の事業構想や戦略を練ることではなく、全社的なビジョンとその実現に向けた新規事業開発の投資方針や戦略を策定した上で、それを共有して徹底的に浸透させることです。筆者はこの投資方針や戦略を「インキュベーション戦略」と呼んでいます。

 1つの事業やプロダクトに集中して急激な成長を志向するスタートアップの場合であれば、「事業のビジョン≒全社的なビジョン」「事業の戦略≒企業の戦略」という構造になるケースが多いでしょう。それによって生み出されるプロダクトやサービスの成長こそが最も優先されるべきであり、全社的なビジョンや方針・戦略を改めて策定する必要性は相対的に低くなります。しかし、安定した収益を上げる既存事業がある企業の場合には、新規事業開発は「ビジョンの実現に向けた全社戦略や成長戦略において取り得る選択肢の1つ」という位置付けになります。企業にとって新規事業開発やイノベーションは、あくまでも“手段”であって、“目的”ではないのです。

 では、ビジョンに基づく新規事業開発全体の方針や戦略を策定するには具体的にどのような論点を意識して検討を進めるべきでしょうか。筆者は以下のように定義しています。

ビジョンに基づく新規事業開発全体の投資方針や戦略=インキュベーション戦略を策定する際の論点ビジョンに基づく新規事業開発全体の投資方針や戦略=インキュベーション戦略を策定する際の論点

 この7つの論点について明確にし、経営層がストーリーとして語り続けることが、新規事業開発全体の方針や戦略を共有し、浸透させていく上では重要になります。これが徹底されていない場合、経営層と現場との間に意志や認識の大きな乖離が生まれたまま不確実性の高い困難なプロジェクトを任せられることになり、当事者意識を持てないまま暗中模索を続けることになります。当然、パフォーマンスや成果は上がりにくくなり、成功確率も大きく下がります。

 また、現場が主導して懸命に進捗させている新規事業プロジェクトがあったとしても、それが全社的な方針や戦略と合致していないため優先度が下がり、プロジェクトの縮小や中止・撤退を余儀なくされることもあります。結果として現場のモチベーションは大きく低下し、今後の新規事業開発や健全な多産多死の土台となる「挑戦しやすい組織文化の醸成」を阻害する要因にもなり得ます。この傾向は企業規模や事業数が拡大すればするほど顕著になるため、より方針や戦略を策定する重要性が増していきます。

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この記事の著者

北嶋 貴朗(キタジマ タカアキ)

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