プロジェクトを円滑に進めるために組織全体で理解すべき“新規事業開発の特徴”
新規事業開発に取り組む前にその前提となる目的や意義を明確にすることで、それに対応したアプローチを選択することができるようになります。最適なアプローチが事業の失敗確率を下げることは前回も説明しました。その上で、新規事業の考え方や既存事業との違いについての理解を、企業や組織全体で共通して深める必要があります。これを理解せずに新規事業開発を進めると、最適なアプローチを選択していたとしても、思うようにプロジェクトが進みません。事業化や事業の成功まで辿り着くことは困難になるのです。
新規事業と既存事業では事業の検討の仕方においても、検討した内容を実行する組織や体制においても、あらゆる面で大きく異なりますが、それぞれの観点における主要な違いをまとめたのが下記の表です。
新規事業開発においては、そもそも対象となる市場や顧客が不明確であるケースが大半であり、それ故に市場や顧客に関するデータや情報が皆無に等しい状態で検討を進めなければならないことになります。そのため、精度の高い事業プランや計画を立てることは困難であり、必然的に事業の不確実性が高くなります。このような状況下でゼロから事業を立ち上げ、進捗やKPIを観測しながら試行錯誤を繰り返していく必要があるため、既存事業と比較すると成果を創出して企業や業績に貢献するまでには長い時間を要します。短期の時間軸で成果や評価を見極めるのではなく、中長期で事業を捉えていく必要があるのです。
また、前述のような性質があるため新規事業開発においては、最初から多くの予算やリソースを投下することは現実的ではありません。そのため調査や分析・計画を重視するのではなく、アイデアや仮説の構築とその検証結果を踏まえた方向転換や軌道修正を重視することが適切なプロセスになります。このプロセスを素早く行うことができるチームや人材を抜擢・配置することが重要であり、既存事業とは求められる定義も大きく異なります。
新規事業開発においては、日々変化する事業の検討状況や進捗に柔軟に対応するため、少数精鋭のチーム内で一人一人が多数の役割や機能を担う必要があります。そしてそのような対応や判断を自分たちで自主的に行い、常にチームでやるべき仕事ややり方を考えて創り出すことができる自走力が求められるのです。