今回の実証実験は、これまで石油元売り業界の喫緊の課題であった熟練担当者の経験や職人技に依存した配船計画策定を、AI最適化技術を用いて最適化および自動化を目指すもの。実証実験では、製油所から油槽所へ製品を海上輸送する現実の配船オペレーションを再現するシミュレーター構築及びAI配船最適化モデルの構築を行い、AIによる最適な配船計画策定を実現した。
過去実績データとAI配船結果との比較検証を行った結果、安定供給を実現しつつ輸送効率を最大約20%改善できる配船計画の作成に成功した。これにより輸送コスト削減を図るとともに、属人化しがちであった配船計画業務の標準化ができ、さらには燃料消費量の低減による環境負荷軽減に貢献できるという。
また、計画立案速度も格段に上がり、これまで計画立案に要していた時間の約1/60にまで削減、約1ヵ月の計画を数分で立案することが可能となった。これにより、担当者の業務負担を大幅に軽減し、また複数の配船計画を比較し最良の計画を担当者が選択するという業務プロセスの改善も期待できる。構築された配船計画モデルは、船舶の運航効率や製品の積み付けバランス、航海時間や荷役時間含めた船舶稼働時間など様々な制約条件を考慮しており、計画の実行性という観点においても、配船計画担当者や海運会社にとって違和感のない現実的な配船計画を作成できることを確認したという。
今後は実運用に向け、製油所・油槽所・船舶の数をさらに増やしたAI配船計画モデル構築の検証を実施すると共にシステム構築のための仕様検討を開始し、2021年のシステム運用開始を目指すとしている。