新しい価値を創造する“デザインという行為”への期待
第1部に登壇した佐藤氏は、2007年にコンセントに中途入社。入社当初は、広報誌・アニュアルレポートやコーポレートサイトなど企業広報媒体全般の制作ディレクションに携わっていたが、2012年にサービスデザイン部門が立ち上がったことを機に、サービスの利用体験や事業コンセプトなど、“形のないもの”のデザインにも従事することになった。
このように、デザインする対象は時代とともに移り変わったが、大別すると、デザイナーとして自分がやってきた仕事は、「企業のもつ価値を伝えて関係性を作ること」と「企業の価値そのものを発見し、創造すること」の2つに整理できると佐藤氏は言う。
「最近では、コロナ禍に象徴されるように、先行きの見えない世の中になっていることなどから、企業は新しいサービスを作ったり、既存のサービスを大きく変えたりすることを迫られています。その意味で、特に後者の『新しい価値を創造する』ことに関して、デザインへの期待が高まっていると感じます」
また、デザインという行為には意匠性などのように見た目をデザインすることだけではなく、さまざまな行為が含まれている。例えば、顧客が何を求めているのかをしっかり理解するために、相手の立場に立って「共感する」「観察する」という行為。多様なステークホルダーや事象など「複雑な物事を俯瞰」し、体験やサービスのオペレーション等の「仕組みを作る」行為。まだ世の中に存在しない新しいサービス・製品を開発しようとする際に、プロトタイプを「作りながら考える」行為や、目に見えないものを「可視化・言語化する」行為の重要性も増している。
さらに、企業が新しいことをやるためには、進むべきビジョンを示し、組織内に浸透させなければならない。そのため、未来を描き「構想する」行為や、それを正しく伝えることで「共通意識や文化を醸成する」行為も必要になる。