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二項動態のDX

なぜ戦略と現場活動が一致しないのか──「現在指向バイアス」を超え、DXを推進するCoEとCDOの役割

第2回

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 前回は、日本企業のDXの“現在地”を、方針は「絵」としては存在するものの実行に移すための運営・組織体制が確立されていない状態、言わば“一休さんの屏風のトラのようなDX”とした。そこには3つの課題があり、特に「戦略と現場活動の不一致」の問題を指摘した。今回はその不一致の背景を「組織の階層構造に基づく分断」として、組織変革推進チームとしての「CoE」、旗振り役としての「CDO」の役割などに関して解説する。

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なぜ「戦略」と「現場活動」が一致しないのか

 なぜ、DXを推進するうえで「戦略と現場活動が一致しない」などということが起きるのだろうか。この背景には、組織内の階層構造に基づく分断がある。これを「垂直上の分断」と呼ぶ。具体的には、経営層とミドル層、現場との間における意思疎通の分断である。

 この三者の間で、組織内の変革を進めていかなければならない、という危機感は醸成できている。このことが社会的な機運としての「DX」に価値を感じるところであり、本来、変革への機運を経営から現場まで共通認識を持ちやすい状態にある。

 DXもそうだが、たいていのバズワードは経営層からの一方的な打ち出しの元になったり、現場よがりに終始するものでしかなかったりと、組織での階層間で噛み合わない状況を助長するところであった。つまり、これまでは組織内の方向性が揃うこと自体が稀有だったといえる。

 では、垂直上の分断が起きてしまうのはなぜか。組織としての新たな取り組み、たとえばクラウドへのリフト&シフトやアジャイル開発の実践については、上記のとおり三者での意見の一致を見ることができる。総論賛成でありながら、目の前の個別具体なプロジェクトの意思決定としてはGoが出ない。プロジェクトによってクラウドを見送る、アジャイルは試すレベルで留めるという判断が不思議にもなされてしまう。そんな経験はないだろうか。

 それもそのはずで、現場での意思決定の責任を担うミドル層が新たな取り組みの導入を回避する動きを取ってしまう。組織内にある数々のプロジェクト群において、何も自分が責任者である眼前のプロジェクトで新しい施策を取り入れる必要性があるのか。どのような理屈をつけたところで、このプロジェクトが失敗したときに責任を問われるのは、マネージャーである自分自身なのだ。

 だからこそ、「失敗を許容する文化を育もう」というスローガンが席巻するわけだが、実際に組織的な価値観にまで昇華するには現実には人事評価制度も合わせもって変えていく必要性があり、時間を要することになる。

 そうした想定下で果たしてGoが出せるかどうか。そこには「現在指向バイアス」という、将来の利益よりも目の前の利益を優先してしまう心理的な動きが存在する。このバイアスが新しい取り組みの適用を阻むことになるのだ。ただ、こうしたマネージャーは勇気がないと果たして批判できるだろうか。組織変革という大いなる仕事を個々人の心意気にのみ頼るのには無理があり、組織を変えるためには仕組みでもって臨む必要があるだろう。

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この記事の著者

市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

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