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DXのための「ネットワーク型組織」と「情報の組織内流通」──リーダーシップの変容と学習する組織とは?

ゲスト:株式会社エル・ティー・エス 執行役員 山本政樹氏

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 今回のゲストは株式会社エル・ティー・エス 執行役員 山本政樹氏。前編ではDXにおけるビジネスアジリティを、要求工学の観点で捉えた山本氏の主張を中心に議論が進んだ。後編である本稿では、市谷氏の新刊『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』の主なポイントを山本氏からの質問で明らかにしていく。DX推進のためのネットワーク型組織と情報の組織内流通、リーダーシップや個人の変容とは何かに迫る。

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パーパス制定から開始するDXが失敗する理由

山本政樹(以下、敬称略):市谷さんの新刊『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー(以下、DXジャーニー)』は、私の直近の著作『Business Agility』や『Process Visionary デジタル時代のプロセス変革リーダー』との共通点も多いなと思い、読ませていただきました。その中でもDXとは何かという観点での「2つの変革」と「DXの4つの設計段階」が近い部分だと思います。これに関して説明いただけますか。

市谷聡啓氏(以下、敬称略):ありがとうございます。「DXとは何か」に関しては、経産省のDX推進ガイドライン[1]などの定義もありますが、私が大企業を支援していく中で整理したのが、DXとは「2つの変革」を行うことであるとしたもので、以下の図にまとめています。

DXにおける2つの変革
図版出典:市谷聡啓『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』(翔泳社、2022年)
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 「環境変化」とは、現在もその中にある「コロナ禍」という変化で説明が可能です。社会生活が一変するような変化によって顧客や社会のニーズが大きく変わります。その際に、環境変化から生じた「顧客や社会のニーズの変化」をデータとデジタル技術を駆使して理解することで、製品やサービス、ビジネスモデルを変えていきます。それが1つめの「提供価値の変革」です。提供価値を変えていくのに必要となるのが「企業文化・風土」「組織」「プロセス」「業務」を含めた変化で、これが2つめの「組織の変革」というものです。

 この2つの変革を進めるためのプロセスを整理したものが「DXジャーニーの4つの段階」としたもの、以下の図にまとめています。この順番どおりDXを推進していくものではなく、同時並行で進むことも多いのが特徴です。

デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーに4つの段階
図版出典:市谷聡啓『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』(翔泳社、2022年)
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山本:どのプロセスも重要だと思いますが、特に日本の大企業において、不足するものは何だと思われますか。

市谷:コロナ以降、業務(コミュニケーション)のデジタル化やスキルのトランスフォーメーションは、多くの企業である一定の進展がありました。DXジャーニーの中で中核になるのが「ビジネスのトランスフォーメーション」です。デジタルを基盤とした「新たな事業の立ち上げ」や「顧客への提供価値を高めるプロダクト開発」が、DXの本丸と言えるでしょう。

山本:なるほど。なぜ「組織のトランスフォーメーション」から行わないのでしょうか。

市谷:それは重要な点です。例えば、最近流行りの「パーパス」や「ビジョン・ミッション」ですが、多くの企業の現場では腹落ちしない、もしくはあくまでも「上」が決めた形式的なものという捉え方をする方もいます。

 なぜそうなるのか。それはパーパスなどが制定されても、現場の方々の目の前にある現実は何も変わっていないからです。誤解なく説明すると、パーパスや組織文化の変革はDXに不可欠だと思っています。ただしDXジャーニーにおいては、業務のデジタル化、スキルやビジネスのトランスフォーメーションを現場が実感できてこそ、組織のトランスフォーメーションという段階に入り、パーパスなどに象徴されるような「企業の真の姿」が浮かび上がるのではないかと考えています。

4つの段階の重なり
図版出典:市谷聡啓『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』(翔泳社、2022年)
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[1]経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」(2018年)

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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