ステークホルダー資本主義に求められる経営戦略の1つとしてESG経営にフォーカスし、企業におけるESG経営の取り組みについて調査したところ、投資家をはじめとする外部からの要請が多い、大規模な企業(従業員5,000名以上の企業)ほどESGに対する意識を高めており、59%の企業でESG専門部門を設置し、統合報告書での開示を始めていることがわかった(図1)。一方、ESG経営に向けた具体的な取り組みに関しては、非財務情報の活用を重視する企業においても、高度な取り組み内容になるほど実施できている企業が僅かであることが明らかになった(図2)。
非財務情報の管理状況については、「非財務情報(ESGデータ)の活用」を重視・活動している企業でも、81%は非財務情報をシステム管理できておらず、そのうち55%はデータの定義が未定義、社内に散在している状態であることが明らかとなった(図3)。
ESG経営の推進者については、CEOが「非財務情報活用」の検討をリードすべきとされ、CEOの明確な意志とコミットメントが求められている。CEO以外では、ステークホルダーへの説明責任という面で深く関わるCFOへの期待が高まっている。(図4)
本調査で判明した日本企業におけるESG経営推進の実態と、アビームコンサルティングがESG経営推進支援で培ってきた知見やノウハウから、企業が真の統合型ESG経営を実現するために打破すべき壁とそのポイントを、以下のように導き出している。
1. 重要性の壁
これまでESG対応を進めてきた企業ほど、「真の統合型ESG経営」の重要性を認識している。一方、そのような先進企業でも、ESGデータをフル活用した経営管理は実現できていない。そこで、「真の統合型ESG経営」の実現に向けたロードマップを可視化し、その第一歩として手元のESGデータで“ESGと企業価値の関係性”を分析するスモールスタートから変革を実現することが重要である。
2. 収集・管理の壁
「真の統合型ESG経営」を目指し、活動を進めている先進企業群においても、ESGデータは社内に散在しており、非システム管理となっている。企業の開示情報から多種多様なESGデータが取得できるため、まずは、企業内に存在するESGデータ量を把握することが求められる。
3. 推進者の壁
「真の統合型ESG経営」の旗振りにはCEOの明確な意志とコミットメントが求められている一方、ESGデータの管理において主管部門が存在しないか不明である企業が大半。推進者であるCEOが正しい外部の期待値を把握し、CFOや主管部門の連携を維持することが重要である。
【調査概要】「日本企業における非財務情報活用とその実態調査」
- 調査期間/2021年3月15日(月)~3月31日(水)
- 調査方法/インターネット調査
- 調査対象/日本CFO協会に登録する企業のCFOや経理・財務幹部
- 有効回答数/249社