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地域企業のグローバル戦略

地域企業のグローバル戦略は“ややこしい産業”での組織能力──市場受容性・経済性・比較優位性とは?

第1回

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 いま、地方都市に拠点を構える企業には、地域経済の衰退による売上減少や人手不足に悩まされている企業も少なくありません。その一方で、そうした悩みとは無縁で、好業績を維持している地域企業も実在しています。地域企業であったとしても、全国や海外にビジネス展開できれば、地域に拠点があることは不利になりませんし、人材も地域外から獲得しやすくなります。むしろ、地域に根差した独自の要因が「模倣困難性」の一部にできていれば、地域企業であることが競争上有利になります。本稿では、日本の地域企業がグローバル戦略を立てる際に使えそうな理論やフレームワーク、概念を紹介します。次回以降、地域と企業を具体的に絞り、宇都宮に本社を置くグローバルトップ企業を取り上げます。

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地域企業におけるグローバル戦略の有効性は何か

 日本企業に限らず、国や地域を超えて成功するビジネスにはどのような特徴があるのでしょうか。本稿ではグローバル戦略の有効性に影響を与える要因を、「市場受容性」「経済性」「比較優位性」の3つに整理します。それぞれには促進要因と阻害要因があります。促進要因を強化し、阻害要因を回避または低減することで、グローバル戦略の有効性は高まります。

1:市場受容性

 本稿では「市場受容性」を、新規に海外市場へ参入する際の受け入れられやすさと定義します。グローバルに事業を展開するには、海外市場に新規参入し、顧客から一定の支持を得ることが必要です。しかし、国や地域によってニーズが異なる場合や、参入障壁が高い場合は、グローバル戦略の有効性は低くなります。次項まで、地域企業のグローバル戦略に影響を及ぼす市場受容性に関して、「促進要因」と「阻害要因」をキーワード別に整理していきます。

(A)ニーズの万国共通性

 最近、日本のアニメ映画「鬼滅の刃」がアメリカでヒットしました。その理由は、この作品に国や地域を超えて支持される要素があったからです。過去にはドラえもんやドラゴンボール、ピカチュウなども世界的にヒットしました。アニメやゲームなどの娯楽コンテンツは、ニーズの万国共通性が高いという特徴があります。日本を代表する輸出製品である自動車や電子部品も、万国共通のニーズを満たす力があります。

 他方、ニーズの万国共通性の低さはグローバル戦略の有効性を低下させます。例えば食品は、自動車や電子部品に比べてニーズの万国共通性が低いです。その理由は、文化や宗教的な影響が大きいからです。

 ここ数年、アメリカで植物肉の売上が伸びていますが、日本ではそれほど伸びていません。その理由は、食文化の違いにあります。アメリカでは主に牛肉を日常的に食べる文化があり、1人あたりの平均的な食肉の摂取量は250~300グラム/日に上ります。これは日本人の倍以上です。そうした中、近年はハリウッドスターなどの有名人を中心に、健康や地球環境、動物愛護などの理由でヴィーガン(動物系の食品を食べない)やベジタリアンが増えています。その影響で、そうでない人たちの間にも、肉の消費を減らそうとする動きが出てきました。こうした人たちが肉食を控えるときに食べる肉として、植物肉が流行しています。日本は毎日のように牛肉を食べる習慣を持つ人が少ないので、植物肉のニーズはアメリカほど強くありません。

 ただし、近年ではインターネットやSNSの普及によって、国や地域によるニーズの違いは小さくなっています。特に、SNSを用いたマーケティングが盛んな若者向けのアパレルや化粧品は、国を超えてニーズが似通ってきています。

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この記事の著者

金子 浩明(カネコ ヒロアキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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