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『ナラティブカンパニー』著者の本田哲也氏が語る、現代の企業に欠かせないナラティブの実践

前編

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 新産業の共創を目指すSUNDREDは、5月26日に共創のために必要な知識や対話による気づきを得るためのオンラインイベント「今夜はIndustry-Up」を開催。第1回目のゲストとして、『ナラティブカンパニー―企業を変革する「物語」の力』を出版した本田事務所の本田哲也氏が登壇。本書の中で、ナラティブカンパニーの事例としてアマゾン、ソニー、メルカリ、ネットフリックス等と並んでSUNDREDが紹介されたことから、今回のイベントが開催された。本イベントでは、SUNDRED代表の留目真伸氏とともに、企業コミュニケーションにおける新たなキーワードとして注目される「ナラティブ」について議論していった。  前編となる今回は、ナラティブとは何か、ナラティブを実践するにはどうすればよいのか、なぜナラティブはニューノーマル時代に重要になるのか、本田氏が解説した様子をお届けする。

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ナラティブと企業・ブランドストーリーとの違い

 ノーベル経済学賞を受賞したイェール大学のロバート・シラー教授が2019年に出版した著書『Narrative Economics』で、様々な経済事象にはナラティブの力が作用していると説いているように、「ナラティブ」は世界中で注目されている。このナラティブについて本田氏は、「物語的な共創構造」と定義する。企業・ブランド、消費者、従業員、取引先、株主などあらゆるステークホルダーと共創する「複数の集団共有ストーリー」だというのだ。

 では、「ストーリー」とは何が違うのだろうか。本田氏は、どちらも「創業者や企業の強い想い」が起点となっているものとした上で、両者の3つの違いを説明する。

 1つ目は「演者の違い」。企業が発信するストーリーでは、企業やブランドが主役で、生活者はそれを眺める聴衆とはっきりと分かれている。一方ナラティブは、企業だけでなく、生活者や従業員などのステークホルダーも登場人物として物語に参加することが特徴だ。2つ目は「時間の違い」。ストーリーは始まりと終わりのある“起承転結型”が特徴だが、ナラティブは常に“現在進行形”であり、物語は未来まで包含して連綿とつながっていくことが特徴なのだという。3つ目は「舞台の違い」。企業ストーリーやブランドストーリーは、その企業が属する業界や競合など、会社起点で語られるものが多い。それに対してナラティブは、社会全体を舞台に描かれており、企業や業界を超えた社会の集合的な考えや価値観を体現するのが特徴だと話す。

ストーリーとの違い

 このナラティブを実践する企業群を、本田氏は「ナラティブカンパニー」と呼び、その例としてパタゴニアを紹介した。

 「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」ことをPurposeとして掲げるパタゴニアは2017年、トランプ大統領による国指定保護地域の縮小に反対の声を上げた。これに対して、ユーザー/非ユーザー問わずナラティブに共感する人が賛同したり、アウトドアブランドの競合他社ですら賛同したりしたのだという。「故郷である地球を救う」というナラティブを共に紡ぐ社会の“共創構造”の中心にいるパタゴニアは、ナラティブカンパニーの好例だというのだ。

 本田氏は、企業のカルチャーや創始者の想いがナラティブの起点になるとした上で、ナラティブを意図的に作っていくための方法を紹介する。

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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