アナリティクスで進化したスタートアップ手法
『リーン・スタートアップ』のエリック・リースがシリーズエディタを務めるシリーズの最新作。3年前に日本でも出版されムーブメントを作ったリーン・スタートアップですが、その考え方をベースに、ビジネスのアナリティクスの方法論を加えた内容になっています。
ここでリーン・スタートアップの考え方を振り返っておきましょう。「リーン」という言葉はトヨタ生産方式で有名ですが、無駄を少なくする生産方式を事業開発の方法論に応用した考え方です。 リーン・スタートアップで提唱されたのは、まず製品やサービスを立ち上げる時に、最初に最小限の製品である「MVP」を作り、顧客にヒアリングを重ねていくことです。顧客にインタビューをしながら、その仮説を検証していき、その仮説が誤っていた場合、製品・サービスの方向を変化させていきます。 いくつかの要件のうち軸足を定めて、回転させていくこの変更をリーンスタートアップでは「ピボット」(転回)と呼びます。
この方法論は、エリック・リースの前に、スティーブ・ブランクが「顧客開発」という名で体系化していて、その考え方は、『アントレプレナーの教科書』『スタートアップマニュアル』(ともに翔泳社)にまとめられています。
リーン・スタートアップは、この顧客開発の考え方に、アジャイル・ソフトウェア開発とリーン生産方式を組み合わせて、イノベーションの手法としてまとめあげ、ブームを作りました。実際、事業家として経験の深いスティーブ・ブランクに比べて、エリック・リースは、開発エンジニアとしてのキャリアを全面に出していたこともあり、Web系やクラウド関連のサービスを立ち上げるベンチャー・コミュニティにとって馴染みやすかったという背景もあるでしょう。
このリーンスタートアップが日本でも出版され、スタートアップ企業やWeb系企業のコミュニティに支持されました。そして、その著者が監修する形でのリーンシリーズのアナリティクス版です。
アナリティクスといっても、昨今ブームの大量データを扱うビッグデータ分析でもなければ、統計解析ツールを用いた高度分析の手法ではありません。この本の画期的なところは、事業開発をおこなう際の、それぞれのビジネスモデルや、ビジネスの成長ステージごとに、「どのような指標で、何を分析するか」をざっくりと網羅的に解説してくれるところです。