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「大企業による新規事業」のリアル

DNPの松嶋氏と内山氏が実践した、新規事業立ち上げ前の入念な準備・スタートダッシュ・素早い変化

第20回 ゲスト:大日本印刷株式会社 松嶋亮平氏、内山まり氏

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DNPの新規事業開発はムーンショット狙い

畠山和也氏(以下、敬称略):松嶋さんと内山さんが所属するビジネスデザイン本部は、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか。また、どのような経緯でこの部署に配属されたのでしょうか。

松嶋亮平氏(以下、敬称略):私は元々ICカードの設計開発や販促活動を十数年やっていました。その後、中期事業計画の策定、M&Aや関連グループ会社、出資先の経営再建支援に携わっていたのですが、現社長に交代した2018年6月が、大きな節目となりました。

 当時は、スタートアップ企業、ユニコーン企業、DXといった言葉を内外でよく耳にするようになった時期で、「時代の動きにDNPは乗れているのか?」といった議論もさかんに行われるようになっていました。そこで私は、「2020年頃には、収益の柱の一つでもあるICカードの成長が止まるだろう」という厳しい見通しや、「取引していた新興企業が次々とIPOして成長しているにも関わらずDNPの取引高がずっと横ばいとなっている。自社のアセットを効果的に提供できていないからではないか」といった課題認識・問題提起をまとめたのです。

畠山:なるほど。松嶋さんは変化のタイミングで行動を起こしたということですね。

松嶋:140年にわたって受注事業を柱にしていたビジネスの構造を変える必要があるのではないかという議論と、社長の交代などが重なり、DNPでも新規事業を創出する必要性が叫ばれるようになりました。そこで、私を中心に10人ほどが集まり、新たにビジネスデザイン本部を設立することになったのです。

内山まり氏(以下、敬称略):立ち上げ時のビジネスデザイン本部への異動は、まったく予想していないものでした。それまでは、マーケティングセクションでお客様企業のブランディングやプロモーションを担当してきたので、自社の事業開発への異動には不安しかありませんでした。ただ、社長が変わったタイミングでゼロから立ち上がる部署ということもあり、集まったメンバーのモチベーションは高かったと思います。

畠山:食に育児に、モビリティにスマート南京錠と、新規事業は多岐にわたっています。選択する事業領域の基準は設けているのでしょうか。

松嶋:基準は設けていません。新規事業開発には、既存事業の隣接地帯で事業を考える、あるいはムーンショット的な飛び地領域で考えるという2つがあると思うのですが、私たちはムーンショットを狙うようにしているからです。

 ムーンショットに決めた背景には、DNPのアセットやリソースを使うことを前提にした活動だと、縮こまったビジネスになってしまうのではという考えがありました。また、DNP自体の事業領域が広いことも理由の1つです。DNPは既存事業として幅広い領域でビジネスをしているので、領域を定めなくても最終的にはシナジーを生むことができるだろうと考え、隣接地帯での事業検討はやめました。

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 第1CXセンター ビジネスデザイン本部 第1部 部長 松嶋亮平氏
大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 第1CXセンター ビジネスデザイン本部 第1部 部長 松嶋亮平氏

畠山:既存事業が手広いと、ムーンショット狙いでもハレーションが生じるのではないでしょうか。

松嶋:既存事業は四半期単位で収益を追わなければならないのですが、私たちの取組みは短期的な数字にフォーカスしていないため、競合することはありません。むしろ、既存事業側からは「この事業がうまくいったら声かけてね」と言われるパターンの方が多いです。

畠山:現在、そのフェーズに入っている事業はありますか?

松嶋:あります。たとえば食のビジネスでは、私たちは食べ物そのものを作り、既存の包装事業部には、環境に配慮したラッピングを作ってもらっています。そして、情報イノベーション事業部の既存事業部には、この商品のプロモーションを担当しています。

畠山:既存事業も含めて綺麗にビジネスが循環しているんですね。

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この記事の著者

佐藤 友美(サトウ ユミ)

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