投資の拡大とともに世界中で加速するロボティクスのイノベーション
AIの進化とともに期待が高まるのが、製造現場を物理的に支援するロボットです。
デジタル技術を活用した業務改革では、製造現場の省人化と自動化が重要目標の1つとなります。そのため近年、企業のロボティクス(ロボット工学)に対する投資が増大しています。今後10年間で、ハードウエアやソフトウェアを構成する要素の汎用化が進み、ロボットが活躍する場所やシナリオはますます拡大すると考えられているのです。
実際IDCのレポートでは、特にヘルスケア、輸送、建設、公共、小売業界のコスト費消とビジネス成長により、2021年末までに世界の非産業用ロボティクスの年平均成長率(CAGR)は25%に上昇すると予想されています[1]。
各国政府は、ロボティクスが経済に与える影響を認識しており、イノベーションの促進を支援しています[2]。
- 日本政府は、2016年に産業用ロボットの研究開発に対する5年間で10億ドルの投資を決定しました。
- 欧州委員会はロボティクスの研究とイノベーションが生産性と競争力の向上に不可欠であると考え、第7次フレームワークプログラム(FP7:2007~2013年)でロボット知能化技術の研究開発に6億ドル超を投資しました。さらに、製造業とロボティクスのイノベーション支援プログラムである「Horizon 2020」を通じ、9億ドルを投資しています。
- 米国はDARPA(国防高等研究計画局)やNASA(米国国家航空宇宙局)などの補助金プログラムを通じてロボット技術のイノベーションを促進しています。
- 中国、韓国、シンガポール、ロシア、ドイツなどの政府機関もロボティクスに投資しています。
同様に、民間企業でもロボティクスに対する積極的な投資が行われており、2016年にはロボティクス関連企業の買収に180億ドル以上が投じられました。また2017年には、Singapore Technologies Engineering(ST Engineering)が、米国のAethonを最高額の約67億ドルで買収しています。直近では、ソフトバンク、Honeywell、General Electric(GE)、General Motors(GM)、Microsoft、Boeing、Intel、Appleなどの大手企業が新興のロボティクス関連企業の大規模買収を行っており、ベンチャーキャピタル企業もまた、2015~2017年にかけてロボティクス関連のスタートアップ企業に28億ドルを超える投資を行っています。
資金調達の内訳を見ると、ヘルスケア、製造、ドローン、消費財、教育などの分野への投資が多いことがわかります。企業のロボット関連の支出が急増したことで規模の経済によるコストダウンが生じ、産業界のロボティクス関連のイノベーションは加速しているのです。
次のページからは、
- RaaS
- 自律型AGV(無人搬送車)
- ピッキングロボット
- ドローン(無人航空機)
という代表的な4つのロボティクス関連のイノベーションについて、事例とともに見ていきます。
[1]IDC「Robotics Spending Guide」(2017年)