なぜ人間中心設計の導入に失敗するのか
望ましいDXとは、人間中心設計で顧客に求められている自社の変化のポイントを見極めて、製品やサービス及び組織/ビジネスモデルを変革することであり、それを最適・最良なステップで他社との競争優位性を確立していくような活動である。この変革は、一気に広範囲に実施するのではなく、最小単位で少しずつ、PoC(概念実証)のようにやっていくのが現実的だ。
しかし、実際にやろうとする場合、多くの企業が同じような失敗に陥ってしまう。その失敗要因は、以下の4点だと染矢氏は説明する。
これらの失敗要因をまとめると、ユーザが見えていない中で、プロセスの不明瞭なまま、自社の強みが生かされずに、開発が行われる状態だといえる。特に自社の強みは、自社では当たり前になりすぎて見落としてしまうことが多い。
また、単独の要因ではなく、複数の要因が組み合わさった失敗をしてしまうこともある。「誤ったスタート地点」「“強み”が灯台下暗し」の組み合わせに陥ってしまうことは多い。その場合に起きるのは、他社に似たサービスができてしまい、その企業らしさが出てこないという問題だ。ユーザには、なぜこの企業のアプリやサービス、メディアを使うのかがわからなくなり、顧客のロイヤルティを下げてしまう。
「誤ったベンダー選定」「不明瞭なプロセス」 の2点の組み合わせのミスに陥ることもある。アプリやサービス、メディアを作ろうとしてコンペを開催する場合、ベンダーの実績と費用や、要望している機能が網羅されているかの確認はできる。しかし、実際にそのベンダーがどんなアウトプットで、どのような合意形成でプロジェクトを進めるかは、実際にプロジェクトが始まってからわかるケースが多い。このミスに陥ると、依頼したものをどう作り上げていくかが手探りとなり、リリースすること自体が目的になってしまう。その結果、「ユーザ視点で作ること」というもっとも重要な目的が見えなくなってしまう。