読み返す度に発見のある『イノベーションのDNA』
新版で初めて『イノベーションのDNA』を読む方に注目していただきたい点は、イノベータとはどんな人々かを生々しく伝えるために、有名なイノベータの具体的な行動パターンを豊富に紹介していることだ。実は、こうした一つひとつの行動パターンがイノベータの発掘だけでなく、育成のヒントになる。本書でも語られているように、イノベータとそうでない人の違いは行動パターンの違いにあるからだ。日々の行動を変えることができれば、誰でもイノベータになれる可能性があるというわけだ。
あらためて本書を手に取る方には、ぜひ「イノベータを育成するにはどうすれば良いか」という視点を持って読むことをお勧めする。以前に読み取れなかったヒントが得られるだろう。
イノベータの5つのスキルとは何か
『イノベーションのDNA』は、イノベータの5つのスキルを明らかにし、イノベータの育成と発掘に関して多くの示唆を提供してくれる良書だ。育成のヒントの話に入る前に、本書の骨格となるイノベータDNAモデルについて補足する。
革新的なビジネスアイデアを生むためには、斬新なインプットを組み合わせる認知的スキルを発揮する必要がある。本書にも「イノベータは、まったく新しいものをゼロからつくり出すことはまれだった」という一節がある。
まったく新しいものをゼロから生み出すには、長期間にわたる基礎研究が必要となる。大企業の中央研究所はイノベーションの種を生み出してきたが、実際には多くのイノベーションのドライバーとなっているのは、こうした基礎研究よりも既にそこにあるものを新しい見方をすること、組み合わせることで生まれる。
イノベーティブなデザイン企業IDEOが、幅広い知識と一つ以上の専門分野の深い知識を併せもつ「T字型人材」を集めようとする理由もここにある。
「質問力」「観察力」「人脈力」「実験力」がキードライバーとなる行動で得られたインプットが効果的に組み合わさった時、革新的なビジネスアイデアが生まれるとしている。
本書で語られている、こうしたスキルを発揮するためのヒントをいくつか紹介したい。