“デジャ・ヴュ”ではなく“ヴュジャ・デ”が観察力を向上させる
本書では、IDEOのトム・ケリーが「人類学者のような役割が最も多くのイノベーションを生んでいる」と言っている。人類学者のような役割として「自然な環境にいる人を観察し、その行動から学習する技術」と定義しているスキルは、顧客のジョブ(「片づけるべき用事」)を発見することに役立つ。「片づけるべき用事」とはクレイトン・クリステンセンが「イノベーションへの解」と「ジョブ理論」の中で使った言い回しだ。
自然な環境を観察するというのは意外と難しい。人はどうしても自分が見たいように相手を見てしまうし、特に売りたい商品やサービスがあると、その商品・サービスが相手に売れるかばかりに目や耳がいってしまう。これを矯正するためには、普段から意識的に、相手が本当にやりたいことは何かに関心を持つのが有効だ。そして、自分の希望的観測と顧客の本当にやりたいことの違いを見つけられるとジョブというものが何か腹落ちするだろう。