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クリエイティビティで今後注目すべきは、「脳」ではなく「身体知」

チクセントミハイ博士鼎談を受けて--入山・佐宗 振り返り対談 前編

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個人に見る「身体知」としてのクリエイティビティ

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 いやあ、チクセントミハイ教授との対談、むちゃくちゃ面白かったですね。

佐宗(米デザインスクールの留学記ブログ「D school留学記~デザインとビジネスの交差点」著者:
 面白かったですねえ。入山さんの一番の収穫は何でしたか。

入山:
 そうですね、チクセントミハイ教授の提示されているフロー理論は、人の創造性や幸福感と、「フロー状態」とは密接に結びついているというものだったわけですが、ではどういう時にフロー状態になるかというと、自分が幸せだと感じる心の変化よりも、身体的な変化が先に来る、というのは本当に興味深かったなあ。

佐宗:
 チクセントミハイ教授が話されていたピアニストの実験の例ですよね。「あるフレーズを即興で演奏しなければならない時」と、「同じフレーズをただ繰り返すだけの時」とでは、脳の背外側前頭前皮質[注1]の活性度が異なるとか。あと、フロー状態だとピアニスト本人が無意識のうちに、顔の下の筋肉が笑うように動いているとか、私もとても面白かったです。

入山:
 フロー状態と個人の幸福感の関係は、脳科学でも、身体生理学としても明らかということでしたね。ただそこに時間差があって、フロー状態にある時は脳がそこに集中しているので幸福感まで感じられない。先に喜ぶのは体の方で、フローが終わった後で「体が喜んでいた」ことが脳にフィードバックされて幸せを感じる。そこまでが、すでに科学的に測定されていたのは驚きでした。

佐宗:
 そうそう、すなわちそれは、人が体感的に「幸せ=フロー」を感じる前に客観的に「フロー」を測定できるかもしれない、ということですよね。チクセントミハイ博士が、ベルリン市民の表情を集計して街中に掲示する「フローメーター」を紹介していましたが、あれもコミュニティーに対するポジティブ・フィードバックの一例ですよね。客観的に「こういうときにフローが起きやすい」と可視化されれば、意図的にフローの頻度を高めることができるかもしれません。
 実は、家電メーカーのソニーには「スマイルシャッター」という、人が笑顔になるとそれに反応して自動的に撮影が行われるという技術があり、デジタルカメラに搭載されています。この技術は「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」という考え方に発想を得たと聞いたことがあります。
 Apple Watchの発売を待つまでもなく、ウェアラブル機器の可能性が注目されていて、テクノロジーの対象としても「脳」から「体」へと、研究者や技術者の関心が移りつつあります。僕は、クリエイティブワークショップを頻繁に開催しているのですが、その中でも、手を動かしたり、体を動かすことで、一気に場の創造性が高まるのを何度も目の当たりにしてきました。クリエイティビティの獲得には、頭脳だけじゃなくて、「身体知」の視点を持つことが重要なのではと感じていたのですが、チクセントミハイ教授の発言からもこれが裏付けられたのではないでしょうか。

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