トップダウンとボトムアップを融合し、組織的にイノベーションに取り組むには?
株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer 佐宗邦威氏(以下、敬称略):ベイソンさんはデンマークのデザインを引っ張るデンマーク・デザイン・センター(DDC)の所長ですが、かつては「MindLab」というデンマーク政府の機関で、デザイン思考を政策立案に導入するイノベーションチームを率いてましたよね。そこでまさにボトムアップでイノベーションを起こして来た印象を受けます。
そそんなあなたが、先ほど、イノベーションを組織化するツールキット「REMODEL Toolkit」を開発したとおっしゃいました。知見が詰まったものなのではないかとワクワクするのですが、どんなものなのですか。
デンマーク・デザイン・センター(DDC)CEO クリスチャン・ベイソン氏(以下、敬称略):多くの「ものづくり企業」がオープンイノベーションを行えるようにと考えて開発しました。パワーバランスに変化を起こせるグラフィカルなツールで、多くの人が使えるように、オンライン上で公開して、無料配布しています。
ベイソン:より多くのアイデアをうまく結実させるためには、様々な人から意見を募り、公平に考えることが必要です。しかし、ヒエラルキーのないフラットな組織は理想ではありますが、どんな組織も力関係から自由ではありません。選挙で選ばれた議員が参加するとその人の意見が通りやすいということがあります。
早稲田大学大学院(ビジネススクール) 教授 入山章栄氏(以下、敬称略):REMODEL Toolkitを作った背景には、どんなことがあったのでしょうか。
ベイソン:このツールキットを活用しワークショップに取り組むと、プロジェクトにクリエイティブ・メソッドを持ち込む手助けになります。その結果、プロジェクト内での力関係に変化が生まれ、「戦略的意思決定」と「ボトムアップでの創発」のバランスを取ることができるようになるのです。
このツールを最初はグローバルカンパニーを含むデンマークの2社とともに開発をしていたのですが、次第に採用する企業・団体が増えていきました。現在、170ヶ国に拠点を持つ国際連合開発計画(UNDP)でも使用されています。これはこのツールが広く普遍的に使えるということを示していると思います。
入山:世界170ヶ国ですか! それはすごい。