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「三位一体の経営」の実践者

ラクスル松本CEOと語る、三位一体の経営──投資家を社外取締役に加えたガバナンス体制と経営人材の育成

ゲスト:ラクスル株式会社 代表取締役社長CEO 松本 恭攝(まつもと やすかね)氏

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 みさき投資代表取締役社長・中神康議氏とシニフィアン共同代表・小林賢治氏が、三位一体の経営を実践する経営者との議論から新たな企業経営の行動パターンを探索する本連載。第1回は、ラクスル代表取締役社長CEO・松本恭攝氏をゲストに迎え、IPO後も継続的な成長を実現する同社の経営システムの秘訣に迫った。前編では、経営の主要KPI「売上総利益」を30%継続成長させることへのコミット、そして、その実現にどのような経営システム・ガバナンス体制を構築したのか。特に、社外取締役を中心とした取締役会や経営意思決定システムの刷新についてお聞きした。

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「売上総利益」の継続的な成長を目指した理由

小林賢治氏(以下、敬称略):私が社外取締役として参画させていただいた当時(2020年10月)、資本市場に対して「売上総利益の継続的な30%成長」をコミットされましたね。ほぼ同じタイミングで経営の意思決定の仕組み、ガバナンス体制を変更されています。その意図や背景をお聞きできればと思います。そこには中神さんの「三位一体の経営」の影響もあったとか。

松本恭攝氏(以下、敬称略):それでは、三位一体の経営の中核となる「複利の成長」をラクスルとして体現した「売上総利益の継続的な30%成長」、それを実現するガバナンスへの移行に関してお話しします。

 「複利の成長」という観点は、東京証券取引所マザーズに上場した2018年のちょうど2年前ぐらいに、株主でメンターでもあるGMOペイメントゲートウェイ(以降、GMO-PG)の村松竜さん(現・取締役副社長)の助言がきっかけでした。GMO-PGでは、経営の主要KPIを「営業利益25%成長」[1]に設定しています。

 その実現の秘訣が「複利の成長」だとおっしゃっていました。というのも、中神さんの『三位一体の経営』にもあるように、「複利の成長」を目指さないと、「額の成長」にとどまってしまうと。では、複利の経営を目指すにはどうすればいいか。まずは「複利の経営とは何か、そしてそれを目指すこと」を宣言することにしました。日本ではMonotaRO社やエムスリー社、GMO-PG社、海外でもGAFAなどのメジャーなテック企業は皆、この複利成長、言い換えるならば“二次曲線的成長”を目指しています。この複利成長企業を目指すことを決断しました。

複利の経営
出典:ビズジン「みさき投資中神社長に聞く「三位一体の経営」──なぜ日本企業の実質賃金は上がらないのか?」(「三位一体の経営」の実践者、2021年11月18日)
クリックすると拡大します

小林:では、「売上総利益の継続的な30%成長」にコミットした理由は何でしょうか。

松本:経営指標には様々なものがあります。私たちはコントロールしやすい「営業利益」を指標にするのではなく、売上というトップラインの成長を目指しながら、投資額も増やしていく「売上総利益の継続的な成長」を目指しました。

 なぜ「営業利益」ではいけないのか。例えば直近の例では、コロナ禍において印刷事業のラクスルは売上が急減した期間がありました。緊急対応として広告宣伝などのマーケティング費用を圧縮したところ、赤字予想だったものを黒字化することができました。ただ、売上成長率は急減しました。このことからもわかるように、緊急措置は別として、営業利益をメインのKPIとしてしまうと、利益をさらなる投資へと振り向けて、その投資でさらに利益を増殖させるという「複利の経営」は実現できないということを経験しました。

 印刷事業のラクスルは生産者と購入者の間に立つ印刷プラットフォームであり、購入者からの売上だけではなく、生産者である印刷事業者へ支払った額が付加価値です。会計的な言葉で表現すれば、顧客からの信頼の総和である「売上高」および、顧客・サプライヤーへの付加価値の総和である「売上総利益」の最大化を重視することが必要です。

企業価値の源泉となる「売上総利益」
出典:ラクスル株式会社「2022年7月期第1四半期決算説明会資料」(2021年12月9日、10P)
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[1]GMOペイメントゲートウェイ株式会社「2021年 決算説明会資料」(2021年11月12日)

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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