物流・ロジスティクスが新たな進化のフェーズへ
物流は、これまで時代に合わせて様々な進化を遂げてきた。たとえば高度経済成長期には、トラック輸送ネットワークの全国網羅が進められた。1990~2000年代のIT革命においては、倉庫管理システム(WMS)などが導入されるようになり、ロジスティクス(戦略物流)の概念が浸透した。
そして近年、物流を取り巻く環境には新たな進化の波が訪れている。IoTやデータ分析をはじめとするAI活用や5Gの社会実装などといったテクノロジーの普及は、ビジネスにおける物流の在り方を大きく変えることになるだろう。
本書では、コロナ禍以降の省人化、自動化、無人化が進む物流・ロジスティクス領域で起こっているテクノロジーの革新や、サプライチェーンの最適化に関連する一大ムーブメントを「シン・物流革命」と命名している。
たとえばドローンの活用などは、近年の物流・ロジスティクス領域における大きな変革といえるだろう。日本でも、完全実用化がすぐ間近に迫っている。
また、サプライチェーンの司令塔ともいえる物流センターも、AIによる在庫管理、入出荷管理、作業者管理などを無人で行う「考える物流センター」への進化を歩み始めているという。考える物流センターは近いうち、自らサプライチェーンの最適化を考えるようになるというのだ。
フィジカルインターネット構想がもたらすライフスタイル変革
「フィジカルインターネット」とは、データ送信を行う際のインターネットのような仕組みを、物流・ロジスティクス領域へ概念的に転用していこうという考え方。
インターネットでは、張り巡らされたウェブ状のネットワークを活用し、送信側から受信側へパケット単位で情報を伝達する。この概念を物流に当てはめると、コンテナやパレットを物的なパケットに見立て、標準化された倉庫などの拠点(ノード)と輸送ルート(リンク)を設定することで最適化を実現するというものになるわけだ。また、倉庫や輸送ルートはシェアリングできるようになるため、これらのネットワークは共通のインフラとして広く開放されることになる。
たとえば、ある業者の荷物を運ぶトラックの積載率が満載となっていない場合、ネットワークを通じてそのデータを共有し、途中の区間で他者の荷物を混載することで、トラック積載率の問題を解決できる。そして、これに伴い在庫量の削減や作業生産性の向上も見込める。
現行のサプライチェーンでは、製造業や卸売業、小売業におけるデータのほとんどが未連携で、人材および効率面などにおける課題が山積しているという。しかしフィジカルインターネットが現実のものとなれば、物流はこれまで以上に身近なものとなり、「打ち合わせはインターネット(デジタル)で行い、サンプルや商品はフィジカルインターネット経由で別送」というビジネスパーソンのライフスタイルが、一挙に一般化していくのではないかと本書では述べられている。