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新たな概念「ゼブラ企業」

経営の在り方を変える「インパクト・マネジメント」、事業の物語を描く「セオリー・オブ・チェンジ」とは?

第2回

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 前回は、2016年に米国の西海岸から始まり、世界中で広がっている「ゼブラ企業」の特徴と、その背景にある社会的動向、そして日本にはどういったゼブラ企業があるのか、なぜ今注目されているのかといった点について解説しました。第2回となる今回は、こうしたゼブラ企業のムーブメントを踏まえ、経営・事業の社会性と経済性を両立させる上で肝となる「インパクト・マネジメント」と「セオリー・オブ・チェンジ」について解説します。

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なぜゼブラ企業は「新しい概念」といわれるのか

 前回の記事では、ゼブラ企業の4つの特徴として以下のように紹介しました。

  1. 事業成長を通じてより良い社会をつくることを目的としている
  2. 時間、クリエイティブ、コミュニティなど、多様な力を組み合わせる必要がある
  3. 長期的でインクルーシブな経営姿勢である
  4. ビジョンが共有され、行動と一貫している

 これだけを見ると、一般的な優良企業や「三方良し」といった概念と同じような印象を持った方もいるかもしれません。

 たしかに、ゼブラ企業の特徴自体はそこまで目新しいものではありませんが、ゼブラ企業に関連した動向の中で、私たちが特に新しいと思っている2つの側面があります。それは、「インパクト・マネジメント」と「金融の多様化」です。

 今回は、企業のマネジメントや新規事業の在り方に直結する「インパクト・マネジメント」についてお話しします。

社会的インパクトを求める潮流が経営、事業の在り方を変える

  皆さんは、「インパクト投資」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

 一般的な「金融」では、金銭的なリターン(利息、配当、値上がり益など)を求めてお金を貸したり出資したりしますが、近年注目を浴びているインパクト投資は、「財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資」といわれています。つまり、お金のリターンとともに、社会や環境にとって良い行いを求める金融ということです。

 インパクト投資そのものは2007年、ロックフェラー財団による国際会議で生まれた言葉で、投資家も社会に対してより強い責任を持って行動しようという潮流の中から出てきた概念です。

 インパクト投資をグローバルで広げようとしているGIIN(Global Impact Investing Network)の集計によれば2019年末段階で、世界でインパクト投資の規模は7,150億ドルまで広がっており、今後も拡大が見込まれています。

 日本でも、金融庁が2020年6月よりメガバンク、生命保険会社、地方銀行、信用金庫、信用組合、ファンドマネージャーなど、金融業界の主要なプレイヤーを集めた「インパクト投資に関する勉強会」を開始して政策的にも注目されており、日本の市場も拡大してきているところです。

 インパクト投資が伝統的な金融と異なる点は、投資をする側も受ける側も、社会的なインパクト(成果)をあげようという意図を持ち、実際にインパクトがあげられているかどうか確認し、マネジメントしようとしているところです。これを「インパクト測定・マネジメント(IMM:Impact Measurement and Management)」と呼びます。

 元々は、本当に社会的な成果が出ているか測定し、監視するという側面が強い「インパクト評価(インパクト測定)」という言葉が主に使われていましたが、昨今は事業運営の中でインパクトを可視化し、その情報をもとに意思決定・事業改善を行うことでインパクトの向上を目指す“マネジメント”にも重きが置かれるようになり、「インパクト測定・マネジメント(IMM)」という言葉が使われるようになりました。

 インパクト投資というと、金融業界だけの言葉だと思われがちですが、そこから派生した「インパクト・マネジメント」は、今後の経営、マネジメントの在り方に影響を与える潮流の一つです。

 ゼブラ企業が注目される背景の1つとして、こうした社会的インパクトを求める動きが広がっていることがあり、今後の経営や新規事業において、インパクト・マネジメントの注目度は一層高まっていくのではないかと感じています。

 では具体的に、インパクト・マネジメントではどのようなことを行うのでしょうか。次ページでは、まず具体的な第一歩としての「セオリー・オブ・チェンジ」について解説します。

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この記事の著者

陶山 祐司(スヤマ ユウジ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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