オープン・イノベーションは研究開発スピードアップのカギ
「オープン・イノベーションで、モノ作り企業を強くする」をミッションに、製造企業を中心に技術仲介業を展開するナインシグマ・ジャパン取締役の星野達也氏は、「オープン・イノベーションはメーカー企業の研究開発をスピードアップさせる武器」と言いきる。
顧客ニーズの高度化・多様化が急速に進む一方で、自社リソースはそう早くは増やせない。このギャップを社外の知見で埋めようというのが、オープン・イノベーションの発想だ。
極論ですが、開発スピードを倍にしたら、開発時間を半分にできる。つまり同じリソースで2倍の開発ができる。時間をかけてでも自分たちで頑張る時代からスピードを重視して、必要があれば社外のリソースを使うという考え方に変化してきています。
背景には、インターネットの普及による知識労働者の分散、中小・ベンチャー企業の技術力向上などもあり、2000年前後から技術仲介業の会社も増え、技術の流通は加速している。
オープン・イノベーションによくある誤解とは?
この数年で日本でもオープン・イノベーションに取り組む企業が増えている一方、星野氏は日々の営業でまだ次のような誤解によく出合うという。
- 「従来の連携と同じ」→「新しい組織との連携である」
従来の産学共同やサプライヤー・グループ企業との連携は「想定内」であるのに対し、オープン・イノベーションは業界・組織・地域の壁を超えて世界中にパートナーを求め、最適な技術を探し出す。 - 「アウトソーシングと同じ」→「インソーシングである」
アウトソーシングはビジネスプロセスの一部の外部化だが、オープン・イノベーションは社外の技術を社内に取り込む「インソーシング」。技術は流出ではなく流入する。 - 「費用がかかる」→「研究開発の費用対効果を高める」
初期投資は必要だが、軌道に乗れば費用対効果は高い。P&Gは100件のオープン・イノベーションプロジェクトを実施した後、「1から自前で開発した場合に比べて半分のコストで済んだ」「3、4年かかっていた商品化が2年でできるようになった」と発表している。オープン・イノベーションの成果が出るのは、一般に3~5年後からである。