ビジネスモデルを構成する5つの要素
堀雅彦氏(以下、堀氏)は、「事業開発とは不確実性の塊であり、試してみないとどうなるか分からない世界」だと語る。つまり、いかに事業アイデアを世に出し、試す機会をつくれるかどうかが問われるということだ。ただ、実際には試すことなく埋もれていくアイデアがほとんどである。
なぜアイデアの多くが埋もれていくのか。それは、意思決定者に「投資する価値がある」「投資を続ける価値のあるアイデアだ」と思ってもらうこと、すなわち“意思決定の突破”に大きなハードルがあるからだ。
では、事業開発担当者はどうすればこのハードルを越えられるのだろうか。
自らの事業アイデアを投資に値するものだと判断してもらうには、当然ながら、説得力のあるビジネスモデルを提示する必要があるだろう。そんなビジネスモデルという言葉を、堀氏は「持続的に成立することを示す事業の全体構造」と定義。その上で、「それがどんな構造をしているのかを理解すること」「それぞれの構成要素が整合性のあるストーリーでつながっていること」の2つが大切だと説く。
堀氏が定義するビジネスモデルの構成要素は、以下のようになっている。
- 顧客課題:狙うべき顧客と、特定の行為における課題・悩み・ペイン
- 提供価値:事業を実現することで顧客に提供する価値
- 戦略(優位性):事業/サービスが選ばれる理由・選ばれ続ける理由
- 提供手段:事業・サービスを実現する仕組み
- 収益モデル:対価の回収方法・収益モデル
ビジネスの起点になるのは「顧客」であり、顧客が抱えている「課題」だ。そして、その課題に対しどういう喜びを提供するのかという「価値」が存在する。その価値をどうやって実現するのかを示すのが、「手法/仕組み」だ。大前提としてまず求められるのは、この3つの要素がしっかりとつながっていること。「課題」に対して「価値」がズレていては、顧客に刺さらないのは明白だろう。“マーケット側が求めているもの”に対して、“自社が提供できること”が整合性をもってつながっている必要がある。
マクロな視座で捉えるべき要素
しかし、ここまでの要素だけでは、ミクロな観点でのビジネスモデルしか描けない。事業アイデアに説得力を持たせるためには、マクロなレイヤーでのビジネスモデルも捉える必要がある。
マクロな視座で捉えるべき要素は、「顧客」の集合体としての「市場/ターゲット」。「価値」の集合体としての、なぜ選ばれるのかという「戦略(優位性)」。そして「手法/仕組み」の集合体としての、どんなコストが発生し、どう儲けるのかという「収益モデル」だ。ここでも、マーケットの特性を踏まえて、顧客から選ばれる戦略を描けているか。また、その戦い方でどうやってお金(収益)を生むのかといった具合に、各要素の整合性が取れていなければならない。
各要素の間には、斜めのつながりもある。たとえば、ビジネスとは一人の顧客に選ばれるだけでは成立しないため、ある程度の塊を持った「市場/ターゲット」に受け入れられる「価値」を提供する必要がある。また、「顧客」が置いてきぼりの「戦略(優位性)」では意味がないし、その「戦略(優位性)」を実現できる「手法/仕組み」がなければならない。
まずは、このようなビジネスモデルの構造を理解すること。その上で、自分の思い描く事業アイデアが、こうした整合性のある構造になっているかを意識することが重要だと、堀氏は語る。