デジタル庁樫田氏が語る、データについての「3つの原則」
樫田氏は、データについて「3つの原則」を重視していると述べる。
1つ目の原則は、「データとは戦略と実行の一致をはかるもの」だ。「はかる」には、戦略を実行へと移す「図る」と、実行されたものが戦略に合致しているかどうかを測定する「測る」ことの両方が含まれる。世の中には、戦略は優れているものの実行が正しく行われなかったために価値を生み出せていないケースが数多く存在すると樫田氏は語る。それを避けるためには、例えば「売上を伸ばす」という漠然とした言葉ではなく、「売上○○円を目指す」という具体的な数字で上から下へと伝達し、逆に下から上にも「領域Aでは○○円売上が伸びた」と数値を使って明確にコミュニケーションをするが効果的だ。こうした面ではデータが重要な役割を果たす。
2つ目の原則は「データ中心ではなく、ヒト中心で考える」ことだ。「データドリブン」は「データ駆動」と訳されることからも分かるように、データでわかる領域に最終的な正解が含まれており、データに任せて駆動させていけば、正しい意思決定がほぼ自動的に行われるといった考え方のニュアンスを含まれている。
「データドリブン」がある意味バズワードとしてでも気運が高まっていることは良いことだとしつつ、樫田氏は、米国でも提唱されている「データ・インフォームド」をより意識していると述べる。データは、潮流、組織のコンディション、顧客の声、規制など、複数ある要素の1つであり、人間は最終的にこれらの判断材料に基づいて意思決定を行っているという含意があるため、現実により即しているとのことだ。組織運営、経営におけるデータの役割として実際に起きているのは、どちらかというとデータ・インフォームドだという。
データ・インフォームドな考え方に基づくのであれば、人間が理解できなければ、データは判断材料にはならず、ゆえに価値を持ち得ない。人を中心としたデータの使い方・見せ方・理解の仕方が重要なのだ。
3つ目の原則は「データを活用してできることのレベル感を意識する」ことだ。基本的なものから高度なものまで、データの可能性はさまざまだ。多くの企業が苦戦しているのは、これらのレベルを混同し、高度な課題に拙速に挑戦するためだと樫田氏は指摘する。
例えば、一日ごとの売上や売上推移などの現状をデータで把握することと、天候や競合の参入で売上がどう変化したかという原因についての分析、さらにはキャンペーンなどの介入効果の分析はまるでレベルが違う。
多くの場合、基礎レベルに着手するだけで、まずは十分な価値が得られる。組織のデータ活用の段階を認識し、どこから始め、次に何が可能かを理解することが重要である。