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デジタル庁のデータプロジェクトの背景にある「データ原則」と「デザインプロセス」を紐解く

Biz/Zine Day 2023 Autumnレポート:講演者 デジタル庁 樫田光、志水新氏

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データについての3つの原則を活かした「政策データダッシュボード」

 「データとは戦略と実行の一致をはかるもの」という1つ目の原則に照らし合わせ、まずは政策実行の進捗状況を可視化し、共通認識を打ち立てることを目指し、樫田氏はまず「政策データダッシュボード」に着手した。先程の3つの課題における「解決タイプ1」に該当する取り組みだ。これは昨年12月から一般に公開されており、随時更新されている。

政策データダッシュボード
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 政策進捗の可視化はイギリス、シンガポール、アメリカなどのデジタル先進国でも進められている。もちろん日本政府もその重要性は理解しており、これまでもデータや情報の公開にはつとめてきた。しかし、PDFやエクセルデータといった形式を取っており、人中心ではなかった上、今後の課題を明確にするという狙いはなかったと樫田氏は指摘する。

 そのため、2つ目の原則である「データ中心ではなく、人中心で考える」を踏まえ、政府の取り組みが市民や自治体、他省庁、代議士といった幅広いステークホルダーに分かりやすい形で伝わることを狙ったという。

 また、政府のプロジェクトは海外の成功事例などを参考にするため、高い理想を掲げることが多い。しかし、今回はまず着手することを重視したという。3つ目の原則でいう「レベル感」を意識し、高度なことから始めるのではなく、まずはシンプルなところから始めるのが王道だと考えたのだ。

 そのため、まずはもっとも基礎となる、政策の成果を出すために必要な条件を整えることから、地道にかつ丁寧に始めることに焦点をあてたという。これは政府の場合でいえば、まずは政策の対象となる人、つまり受益者を増やす部分にあたる。

 例えば、デジタル行政サービスを提供するためには、まずマイナンバーカードを持っている人を増やす必要がある。また、マイナンバーカードを使ってオンライン手続きができる利用シーンや対応している自治体を増やさなければならない。サービスの使いやすさももちろん重要だ。また、法律上、書面で手続きをすることが定められていると、そもそもデジタルサービスの導入が難しい。そういった法令規制を改正するなど、デジタル行政サービスの提供の前提を整えることは、サービスや利用の増加をもたらし、社会インパクトへと繋がる。

 このように一年半ほどプロジェクトを進め、大臣らを含めた関係各所と丹念に調整を進めながら、実際にいくつかのダッシュボードをデジタル庁のウェブサイトで公開に至ったという。

 対象となっているのは、マイナンバーカードの発行数や、オンライン手続きを行える自治体の数など、政策実行の前提条件に関するものが中心だ。現在の課題を明らかにし、法規整備のロードマップを引いて、きっちりと進捗が正しく進んでいるかを確認できるようにするプロジェクトだという。

 公開後、多くの好意的なフィードバックを、国民や自治体の職員の方、もしくは国会議員・市議会議員の方などから受けているという。政策実行の進捗の実態が見えやすくなったことについての評価は高い。

 データダッシュボードは数値のモニタリングであり、先の樫田氏の区分でいえば、レベル1、レベル2の取り組みにあたる。しかし、これがもたらすより大きな副次的波及効果を狙いたいと氏は語る。

 数値で計測できるようになれば、データ活用の意識が釀成され、うまくいっていない箇所について、さらに詳しく把握する需要が生まれる。また、政策の透明性を担保すれば政府が変わろうとしていると国民にも伝わり政策への興味も換起できる。この取り組みを通じて、データ活用のサイクルが回り始めるのである。

政策データダッシュボード
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 また、政府も大きな組織であり、ゆえに関係者の中で考えている課題や目的がバラバラなこともある。しかし、数値という同じ指標を用いれば、同じ課題を認識し、同じゴールを持つことができる。これによって政府内のプロジェクトに推進力が生じれば、と考えていると樫田氏は語り、自身のセクションを締めた。

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デザインの対象は国民の体験から政策まで拡張

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雨宮 進(アメミヤ ススム)

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