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意思決定のサイエンス

科学的思考法をビジネスの意思決定に取り入れる──人間が行う「仮説立案」、AIが発見する「未知の未知」

【第1回・後編】ゲスト:早稲田大学ビジネススクール 准教授 牧兼充氏

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ダイバーシティや店舗運営にも適用が可能な科学的思考法

──科学的思考法が活かされるのは、ビジネスのどのような場面においてでしょうか。

 それは「なぜ今、科学的思考法か?」ということとも関係してきます。現代はオンライン上でのコミュニケーションが飛躍的に増え、データの量も増えて、データに基づいた判断ができるようになってきています。

 その典型的な例がA/Bテストと呼ばれるものです。あるネット広告が役に立つかどうかについて、半分のユーザーにだけその広告が表示されるようにして、残りの半分と比較して差を見てみましょう、というアプローチです。事前にいくら議論するよりも、実際に試す方が正しい情報が集まるわけです。これをやるコストが飛躍的に下がったので、科学的思考法がより精度高く使えるようになったということが、最初にあります。

 科学的思考法が一番使えるのがオンラインのA/Bテストであることは間違いないのですが、その手法に慣れていくと、実はあらゆる場所で使えることに気づきます。

 例えばコロナ禍で時短営業をするかどうかというときに、「予測アプローチ」の思考をする人は他の会社がどうしているのか調べるところから始めたりします。「行動による創造アプローチ」でかつ科学的思考法が分かっていると、店舗が10あったらランダムに5店舗を選んで、その5店舗だけ時短営業を試してみることができます。それによってお客さんや売上がどのくらい減るのか、コストがいくらだったのかということを確認し、時短営業をしていない残りの5店舗と比較できるわけですね。

「正解のあるイノベーション」と「正解のないイノベーション」
資料提供:早稲田大学ビジネススクール 准教授 牧兼充氏/クリックすると拡大します

 このような方法は、人事の領域にも適用できます。給与みたいなものをランダムに変動させるのは、倫理的にも難しいでしょう。ですが、社内の研修が役に立っているかといったことはA/Bテストが使えます。もし特定の人だけが研修を受けるのは不公平だということであれば、タイミングをずらせばいい。上半期に受ける人と下半期に受ける人をランダムに決め、上半期の研修を実施した段階で、受けた人と受けてない人の差を見れば良いわけです。

 このように、評価する方法はたくさんあるのですが、研修の評価をきちんとやっているところは少ないですよね。「そういう実験をやるための予算がありません」と言われることもあるのですが、研修を実施するための予算を取ってあれば、それ以上のコストはかかりません。単に担当者に科学的思考への理解が足りないだけで、予算の問題ではない。評価の仕組みを入れるだけで、どの研修をもっとやった方が良いかといったことが分かるのですから、やるべきですよね。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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