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ネスレ島川氏と語る、大企業でのエフェクチュエーションの実践──パーパスと対話、コーゼーションとの関係

【後編】ゲスト:ネスレ日本株式会社 常務執行役員 島川基氏

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 前編では、ネスレ日本株式会社の島川基氏(常務執行役員、デジタル&Eコマース本部長 兼 デジタル&Eコマース本部新規ビジネス開発部長)に、既存ブランドのアップデートにおけるエフェクチュエーションの好事例として「ネスカフェ アンバサダー プログラム」の取り組みを聞いた。後編では、大企業におけるエフェクチュエーションがいかにして可能になるのか、イノベーティブなアイデアをビジネスにしていく際に必要となるパーパスやコーゼーションとの関係を深掘りする。聞き手は『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』(ダイヤモンド社)の共著者で神戸大学大学院の吉田満梨准教授。

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なぜエフェクチュエーターは「好奇心」と「聴く力」が必要なのか

吉田満梨氏(以下、敬称略):島川さんは部下の皆さんに、「Curiosity」と「Listen」の大切さを説いているということでした。それはどうしてでしょうか。

島川基氏(以下、敬称略):これからますますAIに働いてもらう時代になっていくと、僕らが勝てるのは創造力だという話になります。でも、創造という行為自体はAIに指示すればできます。本当に大切なのはその手前の好奇心だと思うんです。

 ITの仕事に興味があれば仕組みを理解したくなり、「こうやって動いているんだ」と分かれば、それについて議論できるようになりますよね。相手の領域に入りこまないと対話はできません。相手の領域に入り込めるかどうかの入口は好奇心なので、それを持ち続けてください、と皆さんに言っています。

 そして、「自分はできる」という自負がある人や年齢を重ねた人ほど、人の話を聴くべきだと考えています。僕も日本に戻って最初の年は自分の部門の全社員の話を30分ずつ聴くということをしました。1回だけでは分からないので、半年位経ったらもう一度「今どう?」と聞いたりして、2〜3周やりましたね。

吉田:それはエフェクチュエーターの非常に大事な要素ですね。好奇心があって人の話を聴くことができるから、思ってもみなかった出会いや偶然の組み合わせを活用することができるし、ご自身のドメインの中にとどまらずに価値や目的自体を新しく作っていけるのだと思います。

 私は、エフェクチュエーション的な行動の中で新しい価値を発見して価値をアップデートしていくという動きは、基本的にはローカルな現場でしか起きないと考えています。でもネスレさんの場合、グローバルで推進するものもありつつ、マーケットごとの文化の違いを認めて権限委譲することでローカルでの試行錯誤が起き、それが全体としてのイノベーションの推進力になっている、という構造が見えてきます。

 ローカルな現場での試行錯誤を組織構造の一段上のレイヤーで蓄積し、組織全体の学習を促進していくようになっていくと、全体としてのイノベーションがかなり推進されるのでしょうね。

島川:そう思います。

吉田:日本の企業の多くは、現場レベルでの試行錯誤は大いに行われているものの、それが組織全体の中でうまく活かされないという課題があります。そのため、大きな動きになっていきにくかったり、イノベーションの推進者が組織から離れていってしまったりと、もったいないことが起きているように感じます。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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