パブリックアフェアーズとは
まず、パブリックアフェアーズの概念について再度確認します。
概念としては、PR(パブリック・リレーションズ)と、GR(ガバメント・リレーションズ)の中間にあるのがパブリックアフェアーズです。広く社会全体のあらゆるステークホルダーと関係を構築するために情報発信するのがPRで、昔ながらのロビイングとしてイメージされるような、個別の行政機関や政治家と関係を構築することをGRと呼びます。これらの間にあるパブリックアフェアーズは、もう少し広く社会課題・公共課題に取り組むために、様々なステークホルダーと関係構築することを指します。
定義するならば、「ある主体、企業や団体が、その戦略的な目的を実現するために好ましい環境を整えることを目指して、公共・非営利セクターや社会・世論に対して行う働きかけ」となります。
政治や行政に対する企業からの働きかけは、いわゆる「陳情」として昔から存在していますが、個別の企業を優遇するために政治や行政が動くことは、透明性、公平性などの観点から、昨今は難しくなっています。一方、技術革新のスピードが速くなり、従来の規制では想定していない事態が頻発するなど、政治や行政だけで手に負えないことも増えてきています。市民、政治家、行政だけでなく、メディア、アカデミアも含め、より多くのステークホルダーを巻き込んだ政策立案の重要性が高まっています。
高まる「非市場戦略」の重要性
パブリックアフェアーズと並んでよく言及されるのが「非市場戦略」です。市場戦略については聞いたことがあると思いますが、非市場戦略はあまり聞きなれない言葉ではないでしょうか。
従来の日本企業は、市場戦略を中心に考えてきたと言われます。よく聞くフレームワークでは、3Cとして、市場・競合・自社の観点から分析をします。一方、非市場戦略とは、「外部環境」での戦略を立案することを指します。市場戦略の外縁には、PEST(政治:Politics、経済:Economy、社会:Society、技術:Technology)と呼ばれる外部環境があり、多くの日本企業では、外部環境を所与のものとしてビジネスを構想する傾向にありました。
一方、諸外国では、政治や社会に訴えかけ、自分たちの組織の活動をやりやすいようにするために、外部環境におけるルール形成から関与していく企業が目立ちます。日本企業は、近年コストカットを進め、利益を出してきたことはよく知られていますが、今後は自らルールを構想し、市場を切り開いていく行動が求められます。
さらに、これから技術革新が加速度的に進むことが想定されるなか、技術革新を活かしながら、社会課題解決を志向するビジネスが増えていくはずです。こうした背景を踏まえると、日本においても、自ずと非市場戦略の重要性が高まっていくと考えています。