公共性の高い課題に対しての適切なルール設計
──まずはお三方の自己紹介をお願いします。
城譲氏(以下、敬称略):パブリックアフェアーズのコンサルティングを主な事業としているマカイラの城(たち)です。マカイラではルールメイキングや行政とのパートナーシップ推進支援などに取り組んでいます。クライアントは国内の大企業もいますが、スタートアップや外資系企業を中心に、日系中小企業、NPOやNGOその他にも行政のクライアントもいます。
池上翔氏(以下、敬称略):Luupの池上です。当社は、24年1月現在、全国8都市で電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を提供しています。私は広報と渉外の責任者を務めており、主にメディアや政府との窓口を担当しています。
坂下大貴氏(以下、敬称略):経済産業省の新規事業創造推進室で法務専門官をしている坂下です。普段は光和総合法律事務所のパートナー弁護士として主に企業法務に携わっていますが、2019年から週に2日ほど、経済産業省で産業競争力強化法[1]に基づくグレーゾーン解消制度や新事業特例制度、規制のサンドボックス制度[2]の運用や法改正などを担当しています。
──ありがとうございます。それでは本日の主題である「パブリックアフェアーズ」について簡単に解説いただければと思います。
城:「パブリックアフェアーズ」はまだまだ耳慣れないキーワードかもしれませんが、我々は広義の「パブリックリレーションズ(PR)」の一部だと捉えています。パブリックリレーションズと聞くと、商品やサービスをいかに消費者に対して訴求していくかという活動を思い浮かべる方が多いでしょう。その中でパブリックアフェアーズは、社会性や公共課題の要素が強い課題を扱うものであり、政府や政治家、行政機関、業界団体、NPO、メディアといった公共的な方々にコミュニケーションを図ります。社会性や公共課題の要素が強い課題を関係者に知っていただき、適切なルール設計を働きかける。これがパブリックアフェアーズの目的の一つです。
パブリックアフェアーズは、近年その重要性を高めています。新しいテクノロジーがどんどん出てきたり、社会の価値観が多様化したりする中で、法制度とそれらの間にギャップが生じ、不満を抱え、不都合が生じるケースが増えているからです。
例えばインターネットサービスを念頭に置くと、本来は各国で同じように一斉にサービスを展開したいですよね。にもかかわらず日本では、法制度がそれを阻害することがある。そうなれば当然、日本のルールに疑問を持ちます。このときに必要となるのがパブリックアフェアーズです。ネットサービスではないですが、LUUPを含む電動キックボードについてはまさに、海外が先行して普及し日本がそれを追いかけることになった事例と言えるでしょう。