栗田工業(以下、クリタ)と、水処理に関するデジタル技術を専業とするFracta Leapおよびクリタの海外連結子会社であるクリタ・ヨーロッパは、水処理向け材料開発分野におけるイノベーション創出の効率化と迅速化に向け、マテリアルズインフォマティクス(MI)を導入し、これを活用した低環境負荷の防食剤の開発に着手した。
クリタとFracta Leapは共同で、水処理における画期的なデジタルソリューションの構築を目指す「メタ・アクアプロジェクト」を推進している。同プロジェクトでは、機械学習・シミュレーション技術などを活用することで、水処理の設計・生産と運転管理における効率化・高度化を実現し、顧客に価値を提供しているという。今回、材料開発分野においても機械学習を活用し、材料探索を効率化・高度化することを目的としてMIを導入したと述べている。
クリタグループが連携して行ったMI適用検証の結果を踏まえ、新防食剤の開発を開始。一般的に冷却水系の防食剤には、リンや亜鉛、窒素系化合物が使用されており、安全性への懸念から、近年オランダをはじめとした欧州各国で、これらの物質の使用に対する規制強化の動きがあるという。従来製品の代替となる新防食剤を迅速に開発するためには、その材料を効率的に探索する必要があったとしている。
新防食剤の開発においては、外部データベースに登録されている数百万規模の分子情報から、MIによる機械学習により有望な候補材料を絞り込むことで、探索・分析が高速化。人手による従来の手法では探索範囲が数百分子規模であったのに対し、MIの活用によりその1万倍にあたる数百万分子規模の範囲を高速で探索することが可能になったという。
また、半導体製造における材料溶解制御の分野でもMIの先行的な効果検証を行った結果、既に人手を主とした探索よりも優れた探索結果が生まれているという。今後は、スピードが求められる半導体産業をはじめ、水処理向け材料開発分野にMIを広く適用することで、クリタグループにおける基盤技術の強化を図り、節水、GHG(温室効果ガス)排出削減、および資源循環に寄与するソリューションの創出・提供を加速すると述べている。