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増島弁護士に聞く、スタートアップ買収の「決定的な誤解」──経営企画が担当し、一般的なM&Aと混同する

【前編】森・濱田松本法律事務所 パートナー 増島雅和氏

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スタートアップ買収において蔓延する「決定的な誤解」

──2023年に出版された『スタートアップ買収の実務 成功するオープンイノベーションのための戦略投資』(以下、本書)では、日本のスタートアップ買収における課題や問題点について数々ご指摘されています。まずは、増島さんから本書の執筆動機をお話しいただけますか。

増島雅和氏(以下、敬称略):20年ほど大企業側、スタートアップ側、それぞれの立場でM&Aの支援をしてきたのですが、「日本ではスタートアップ買収が決定的に誤解されている」という思いがありました。それが本書の出発点ですね。とりわけ、大企業がスタートアップを買収する際のアプローチやマインドセットには、改善が必要ではないかと思われることが少なくありません。端的にいえば、安定的なキャッシュフローを生んでいる企業へのM&Aと、スタートアップに対するそれは根本的に異なるのですが、両者を混同しているケースがほとんどです。

 一方で、スタートアップ側もM&Aをきっかけに残念なケースに陥ることもしばしば見受けられます。そもそもスタートアップとは、ある強力なリーダーが志を掲げて、仲間を集め、IPOなどの目標に向けて急スピードで前進している組織です。そんな組織にとってM&Aは、不本意な結末として受け取られがちです。大企業に組み込まれることによって、それまで猛烈な勢いで前進していたメンバーたちのモチベーションが削がれ、リーダーの心が折れ、組織が弱体化するリスクがあります。買収によって、スタートアップの流儀や文化を知らない大企業の管理職が進駐軍のように乗り込んできて、あれやこれやと指図するようでは「こんなはずじゃなかった……」と感じてしまうでしょう。私自身、そうしたケースをいくつか目にしてきた経験から、不幸なM&Aを減らして本来あるべきスタートアップM&Aの実務を広めたいと思い、本書を執筆しました。

中垣徹二郎氏(以下、敬称略):まさしく、そのとおりですね。その点ではアメリカと日本では環境が異なっていて、アメリカでは大規模なM&Aの件数が多く、IPOに準ずるイグジットの手法として広く認知されています。大企業に買収されるのが、必ずしも「不本意な結末」ではないわけです。しかし、日本では買収する側の大企業は「買ってあげる」という意識を持ちがちですし、スタートアップ側も「買ってもらう」とどこか下手に出てしまう。

 この両者のすれ違いが、増島さんのいう残念なケースに繋がっているように思いますね。スタートアップは将来的な価値を含めて買収しますから、買収後には企業価値を向上していかなければならない。そのときに、元のスタートアップのメンバーがモチベーションを失って、「喪に服している」ような状態では、両者にとって不幸というほかありません。大企業に買収される規模まで組織を成長させられたのですから、そのスタートアップの創業者は極めて優秀なはずですし、そのリーダーのもとに集ったメンバーも意欲的な人材に違いないでしょう。そうした人材たちを宙吊りの状態にしておくのは、大企業にとっても、ひいては日本社会にとっても損失だと思うわけです。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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