パートナー企業と新規事業に取り組む意味
吉田:では次に、現在、門さんが関わっているプロジェクトについて簡単に概要をお聞かせください。
門:東京ガスが電気自動車や家庭向け太陽光発電パネル、蓄電池を販売する場合、規模感や価格、ブランドで優位にある大手メーカーなどと競争する必要があります。そのため、商品やサービスの提供方法に工夫が必要だと考え、顧客の具体的な課題を解決するという「ソリューション型のサービス」でアプローチすることにしました。
プロジェクトとして、家庭用太陽光発電や電気自動車、蓄電池に取り組んでおり、各分野に個別のチームを組成しています。プロジェクトは2年前に始まり、週に一度の担当者とのダイレクトミーティングで課題や進捗を報告し、迅速な意思決定を行ってきました。
吉田:プレイドさんの支援の方法についても具体的にお聞かせください。
藤原:まず、新しい形の太陽光パネルの販売について企画段階で相談を受けました。インタビューを通じて顧客ニーズを確認し、コンセプトを洗練させるなどの支援を行いました。当初は発電量などスペック中心の見せ方でしたが、顧客が求めるのは「どのような生活が実現できるか」という点を指摘し、検討の方向を修正しました。結果として、東京ガスのグループ会社から良い反応を得ることができました。
また、電気自動車関連事業については、充電サービスの提供方法、対象顧客や普及戦略などについて企画構築面での支援を行いました。UIなどについても、実際に「この画面なら使いますか?」といった具体的な質問をし、顧客の視点を取り入れて考える支援を行いました。
プロジェクトを通じて見えた成長と課題
吉田:これらのプロジェクトに関わる東京ガスのメンバーは、新規事業に携わってこられた方なのでしょうか。
門:いいえ、新規事業の経験も顧客インタビューの経験もありませんでした。ただし、既存事業部門で商品開発や企画には関わったことがあるメンバーが多いです。
そのため、どのメンバーも、顧客の声が重要だとは理解しているのですが、具体的にどう意見を聞き、何を検証すべきか、といった具体的なアクションについては悩むことがあります。
こういったプロセスへの理解やスピード感は、経験なしには得られません。そこで、プレイドさんというパートナー企業に伴走してもらい、具体的な手法やスピード感をパッケージとして提供してもらいました。
こうしたなかで、まだ十分とは言えませんが、顧客インタビューや仮説の検証については、プロジェクトを通して一定のスキルアップが見られました。
藤原:当初は多くのメンバーがインタビューに尻込みされていましたが、結果として顧客の声を直接聴けたことはとてもモチベーションにつながったようです。「ほしいって言ってくれました!」と喜んでいたのをよく覚えていて、我々としても嬉しかったです。象徴的でしたね。
吉田:顧客からポジティブな反応が返ってくるのは嬉しいですよね。逆に「期待外れの反応」や「がっかりする結果」が出た場合にどのように支援するかも重要なポイントです。こうした経験はありましたか?
藤原:「こういう人は買わないことがわかったのは良かった」と伝えました。もちろん、気持ちは落ち込みますが、次のインタビュー対象の範囲を絞れたわけですから、それは一つの進展です。
門:そうですね。聞き方は間違っていなかったものの、仮説が違っていたということです。正しく聞いた結果、正しく仮説が棄却されたなら、それはむしろ良いことです。そのまま続ければ徐々に結果が見えてきます。