100万件の事業データから事業を生み出す“6つのステップ”
IDEATION Cloudでは下図のような6つのステップで事業案を提案している。
最初に行うのは要件のヒアリングである。今後ベンチマークしていくプロダクトをデータベースから抽出するにあたり、まずは会社が事業を創るときに何を満たしていれば評価されるのか、何を満たしていなければ評価されないのかのポイントを明らかにする。この条件がずれてしまうと、100万件のデータ検索に無駄が生じてしまう。
具体的な質問項目としては、
- 優先する・除外する業界や領域
- 売上規模や達成期間、黒字化目標期間といった目標や時間軸
- 顧客基盤やブランド、特定領域の技術など、会社が使える経営資源
- 会社のパーパスやビジョンとの関係や新規事業を通じて得たい副次的な効果など、取り組む意義
- 立ち上げる事業の準備期間や事業の対象などの事業性質
これらを何回か討議を重ね、ときにはアセットの棚卸しをオプションとして提供しながらきっちりと詰めたのち、初めて100万件のデータの海に飛び込んでいくべきだという。
ヒアリングの後に作成するロングリストは、Relicが抽出する。データベースから数百件、ときに千件にも及ぶベンチマーク候補の事業を取り出すのだ。その後、これを1件ずつRelicとクライアント企業の担当者で確認し、「日本市場との相性」「自社との相性」「事業性」を基準に評価して、推奨案を30件程度選出し、ショートリストを作っていく。両社が「良し」としたプロダクトは必ずショートリストに入るが、片方の会社のみが「良し」としたものに関しても確認する。何らかの前提条件に認識のズレがあるかもしれないし、“良い”と思う背景に発見があるかもしれないからだ。実はここに一番“こぼれ球”があると大丸氏は話す。
その後行うのは、深掘り調査である。各プロダクトの概要(誰の/どのような課題に/どのような価値を提供しているか、マネタイズモデルは何か)、評価されているポイント、日本市場での展開可能性(法規制/商習慣/市場規模/競合優位)を調査・整理する。この時点で筋が良さそうなものが見えてくるが、そこで見切り発車せずに検証に進む前に確認できることはすべてやり切る。
深掘り調査の後に行うのが、アイデア創出である。深掘り調査結果を基に、日本市場に最適化したプロダクト案を10件程度検討し、成功可能性の高い有望な事業アイデアとしてアウトプットしていく。それぞれのアイデアに対して事業企画書を書いたり、リーンキャンパスを整理したり、カスタマージャーニーマップを作ったり、競合調査表を作ったりする。その中で「競合が強すぎる」などと、様々なノックアウトファクターを確認しながら、お金と時間を投じて仮説検証のプロセスに進めるべきアイデアを確認していく。
新規事業伴走サービスでは、ここまでの仕事になることも多い。しかし、Relicはこの後、PoCに進むべきだと判断したものを対象に、受容性検証/簡易課題検証を行う。このフェーズでは3案程度をピックアップし、Relicのインハウスデザイナーやエンジニアが具体的にプロダクトの素案を起こして、ターゲットユーザーに実際にヒアリングする。その結果を持って、クライアント企業の担当者がPoCの稟議を通せば、経営陣に質問された際もロジカルに説明できるのである。