PwC Japanグループは、地政学リスク・経済安全保障環境に対する日本企業の意識、対応実態を把握するため「企業の地政学リスク対応実態調査2024」を実施した。
最も懸念される地政学リスクは、3年連続で「サイバーアタック/サイバーテロ」
最も懸念する地政学リスクは「ロシア・中国・北朝鮮などによるサイバーアタック/サイバーテロ」が40%を占め、3年連続で首位となった。「エネルギー供給構造の変化にともなう需給の不安定性」は20%で2位、その他「保護主義的政策(米国の鉄鋼アルミ関税、EUの中国EV調査、資源国による資源輸出制限など)」が19%と前年比で大きく順位を上げて3位となった。
地政学的分断への備えや国内産業保護、有権者の支持獲得を目的に、米中などの大国や資源国において保護主義的な政策がとられることへの懸念を示す結果となった。
8割超の企業が、地政学リスクマネジメントが経営戦略上「重要」と認識
自社の経営戦略において、地政学リスクマネジメントが「とても重要」または「やや重要」と答えた企業の割合は86%(前年比で1ポイント減少)であった。地政学リスクは企業経営に強い影響を与える重要な経営課題だとの認識が、依然として高いことを示唆している。
7割の企業が、地政学リスクの情報収集やモニタリング体制を確保
地政学リスクの情報収集やモニタリング体制をとっているかとの問いでは、7割の企業が地政学リスクを踏まえ体制確保を行っていることがわかった。
また、地政学リスク対応を進めるため、「海外拠点・子会社における情報収集と本社への共有」(26%)、「専門人材の採用強化」(20%)、「専門人材の社内育成」(19%)など、多くの企業が具体的な取り組みを行っている実態が判明した。
米国大統領選でトランプ氏が再選した場合の最大懸念は「米中対立の激化」
2024年11月の米国大統領選挙でトランプ氏が再選した場合、「米中対立の激化(関税引き上げ、半導体輸出規制など)」(43%)、「日米関係の悪化(貿易摩擦、日本の防衛費増額要求など)」(26%)、「欧州安全保障の不安定化(ウクライナ支援停止、NATO弱体化など)」(19%)などを懸念する企業が多いことがわかった。
4割が中国経済減速の影響を受け、3割が中国国外へ生産や調達プロセスの移管を検討
自社に影響を与えている中国関連の地政学リスクを質問したところ、「全般的な中国経済の減速」(43%)、「中国国内の治安維持強化(反スパイ法など)」(23%)、「米国による経済制裁(エンティティリストなど)による中国企業との取引見直し・中止の必要性」(22%)が上位に入った。
こうした中国関連のリスクを背景に、3割の企業が生産や調達プロセスの中国国外への移管を検討し、移管先として「日本」(44%)、「ベトナム」(29%)、「タイ」(19%)が選ばれている。地政学リスクの高まりや円安の長期トレンド化を受けて、日本国内への回帰やASEAN諸国へのサプライチェーンの多角化を検討する企業が多いことが明らかになった。
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