大企業とスタートアップのオープンイノベーションに必要なこと
池田氏は、これまで様々な大企業とスタートアップの協業についての相談を受けた経験から、「そもそもオープンイノベーションとは何か」を考える必要があると話す。スタートアップから、大企業サイドがノーリスクに近い形で成果だけ獲得するような取引を求めてきて困っているといった話を聞くことがあるからだ。しかし、本来の定義に立ち返れば、オープンイノベーションとは、企業の規模に関わらず、自社に不足するリソースを外部に求める仕組みである。
不足するリソースは、上図に挙げられたように、人材や資金、あるいは顧客基盤や新しい市場など、事業によって、企業によって異なる。オープンイノベーションを行う両者が対等な立場で、お互いに足りないものをどう補い合ってこれまでにない新しい価値を生み出せるか考え、よい均衡点を見出すことが肝心だと池田氏は話す。また、大企業だけでなく、政府自身がスタートアップへのリソースの提供者としての役割も大きいと認識しているため、のぞましい支援のあり方を引き続き考えていきたいと語った。
松尾圭祐氏は、富士通が自社の持つスーパーコンピュータをスタートアップに提供して解析やシミュレーションにかかる時間を短縮することで基礎研究に貢献していると、大企業が出せるリソースの例を紹介。自社の持っているものを活用しつつ助成金を活用しながら協業する方法を考えると、ユニコーン企業の誕生に関われるのではないかと期待を述べた。
松尾一輝氏はオープンイノベーションでは「競争」ではなく「共創」する関係が重要だと主張する。フェーズが進めば大企業もリスクを取る必要が出てくるからだ。
「特にディープテックに関しては、短期間で成果が出ないことも多いので、1年で契約が切れるような関係ではなく、長期的に信頼関係を積み上げていくように進めていきたいと思っています」(松尾一輝氏)
松尾一輝氏はこう語り、鼎談を締めくくった。