ローンディールは、レンタル移籍(大企業の人材を6〜12カ月間ベンチャー企業に移籍させ、経営や価値創造を実践する越境プログラム)経験者に対する独自調査を実施し、その結果をまとめた「越境インパクト調査レポート」を公開した。

同調査では、リーダーシップ、ビジネススキル、エンゲージメント、キャリア自律性、越境度の5つのテーマに関して、学術研究などを参照し、53項目の設問を設けた。

1.リーダーシップ
「使命を持って行動する力」「多様な他者を巻き込む力」「不確実な環境下で意思決定する力」「多様なアイディアを融合する力」の4項目について調査を実施(発達段階を提示した5段階に対して自己評価)。
特に「巻き込み力」は平均1.6 → 3.7へと大きく変化し、自分の言葉で語り周囲から共感を得る力が強化されていることがわかる。また、起業家の近くで仕事をする経験は、移籍後時間が経過しても起業家・経営者の視点を持ち続けられるという効果があることが見えてきた。

2.ビジネススキル
同社が設定している12項目のビジネススキルについて調査。発達段階を提示した5段階に対して自己評価により回答。特に伸びが大きかったのは、「業務推進力(2.4→4.3)」「仮説検証力(1.1→2.9)」「承認獲得力(1.7→3.3)」。この背景には「なぜやるのか」といった個人のWILLに起因した動き方の変化があることがわかった。
また、全体の数値としては全ての項目において上昇傾向だが、一人ひとりの数値を見ていくと経験と成長の関係性が見える。例えば、コーポレート職(人事系)の移籍者がベンチャー企業で事業開発を経験することで「顧客理解力」「事業理解力」が強化される、多様な人材と協働することが求められるソーシャル系企業に行った移籍者は「組織設計力」が伸びる、といった解釈が可能となる。

3.エンゲージメント
多くの人事担当者が「越境は離職につながるのではないか?」という懸念を持つが、同調査を通じて、エンゲージメントでも上昇傾向が見えている。特に「仕事に対するやりがい」や「仕事における成長機会」の認識など、自分が所属している組織で働く意義の再発見に効果があった。この背景には「越境を通じて自分の成長角度が変わった」という個人のスタンスの変化があることがわかった。

4.キャリア自律
「業務外活動」に積極的に参加する、仕事のやり方に「創意工夫」をこらすなど、キャリアを主体的に形成していこうとする行動に特に大きな変化が見られた。実際に、レンタル移籍前に業務外活動を行っていた割合は15%程度だが、移籍後には60%と大きく上昇している。


5.越境度(越境ルーブリック)
同社が運営するもう一つの越境プログラム「side project」との比較により検証。「side project」は業務時間の20%・3カ月という期間で越境をするプログラムであるため、業務内容に対して事前のすり合わせが重要となる。一方で、「レンタル移籍」のようにフルタイムの越境では、担当する範囲が多岐にわたるため事前のすり合わせが難しく、越境中に大きな葛藤に直面することが見えてきた。レンタル移籍では、この葛藤やそれを乗り越えようとする行動が長期的な個人の成長を促していることがうかがえる。

6.その他項目について:越境の経験を通じて「変革の推進者」へ
同調査では、レンタル移籍後の活動についてもヒアリングを行った。その結果、移籍者の85%以上が復帰後に新規事業など変革的な業務に携わっていることがわかった。また約20%がレンタル移籍先のベンチャー企業と取引関係(協業・受発注)へと発展していることが明らかに。これらの結果は、個人の成長にとどまらず、組織における変革や企業間の共創を促す仕組みとしての「越境の可能性」を示している。

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