開示のための開示ではなく、経営のための開示にする
山口氏は、「どんな情報開示をしたらいいのか」と相談する人事担当者によく出会うという。本来「経営やビジョンが主であって、開示は従」であり、「自社にとって重要な人事や組織の情報は何であるか」を考えるところから始めるべきである。しかし「資本市場からこういう情報を求められるので、調べて開示します」という受け身な姿勢になってしまっている会社が多いというのだ。
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「こうなると、その会社で取っている指標、開示している指標が、経営にとって全く意味のないものになってしまう。経営にとって全く意味のないものを開示して『この数字を良くしろ』と言われると、経営と人事がますます乖離し、ちぐはぐな動きを始める可能性があります。これはなんとしても避けなければいけません」
開示のための開示ではなく、経営のための開示をするために、CHROにはこれまで以上にトップダウンで思考することが求められるようになってくると山口氏は指摘する。まず全社ビジョン・戦略を策定し、その上で組織ビジョン・戦略を明らかにする、そこから何を調べるのか、あるいは調べないのか、調べた上でどこを開示するのかを決めていくという考え方が求められる。他社事例や資本家からの圧力で指標が決まり、その中で自社が都合よく測れるものを測り、出てきた結果を後で意味づけするという順番では経営のための開示にはならないのだ。