パーパス策定はゴールではなく“始まり”
企業の存在意義を見つめ直し、新たなパーパス(企業の目的や使命)を策定する動きが広がっています。しかし一方で、「パーパスを掲げたのに、その後、組織全体に浸透せず形骸化してしまう」という課題もよく耳にします。これは、本来企業の推進力の起点となるべきパーパス策定が、ある一定のゴールとしての意味を持ってしまいがちだからこそ起きやすい現象だと言えるでしょう。
パーパスが根付くまでには、2つの実装フェーズを踏む必要があります。まず従業員がパーパスの背景を理解し、自分ごととして捉える「認知フェーズ」、そしてその先に具体的な行動へとつなげる「行動フェーズ」があります。本稿では、この2つのフェーズについて、企業事例も交えながら「策定したパーパスをどう実装し、従業員一人ひとりを巻き込み、行動変容につなげるか」を考えていきます。
“無風状態”を打破する──第一の実装段階「認知フェーズ」とは
パーパスが“無風”になりやすい理由
パーパス策定後によく見られるのが、「反発もないし、賛成の声もあまり出ない」という、いわゆる“無風状態”です。なぜこんな状況が起こるのでしょうか。1つの理由は、パーパスが企業の歴史や現在の事業内容を踏まえて作られているため、従業員が大きく違和感を抱きにくいこと。違和感がない分、反発は少ない。積極的な意見交換も生まれにくいのです。
しかし、「反発がない=共感・理解が進んだではない」という盲点を見逃しがちです。従業員が黙っている“無風状態”の場合、パーパスの理解が“他人ごと”になっている可能性が高いのです。そこで重要になるのが、認知フェーズでの対話と反応の確認です。
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認知フェーズで大切にしたい3つの視点
- 背景と意図を丁寧に共有する:なぜ今パーパスを策定したのか、企業がどのような変化を目指しているのかを説明し、全員が同じスタートラインに立てるようにします。
- 従業員の反応を可視化する:アンケートや対話の場を設定し、「どう感じるか」「どこが分かりにくいか」を吸い上げると、無風状態のまま終わらせずに済みます。
- ワークショップなどで直接議論する:グループディスカッションや社内勉強会を通じて、「日常業務とパーパスはどう結びつくのか」を考えられるようになると、自分ごと化が進みやすくなります。
こうしたステップを経て、パーパスの意味を理解しはじめる段階が認知フェーズです。このフェーズの次に待っているのが「具体的に何をすればいいの?」という問いに応える行動フェーズです。