クアルトリクスは、「2025 年 従業員エクスペリエンス トレンドレポート」に基づく調査を公開した。
同社は、職場における、AI導入の現状に関するインサイトや、こうした変化に効果的に対処するための実践的なプロセスを提供するために、日本の2077人を含む、3万5000人以上の世界の従業員の回答を分析した。
同調査で同社は、2025年に生産性向上、従業員エクスペリエンスの改善、AIの活用を目標に掲げる組織が取り組むべき、いくつかの重要な課題を特定。具体的には、職場での信頼関係の強化、AIに対する認識や期待の再構築、従業員に必要な教育やトレーニングの提供などが含まれるという。
従業員はリーダーがAIを効果的に導入できるか疑問視している
日本では、管理職や一般社員の半数が「リーダーがAIを効果的に導入できる」と信じているが、これは経営陣がリーダーに対して抱いている信頼感より17ポイント低くなっている。さらに、マネージャー以下の従業員で「上司が最新テクノロジーに関する意思決定の際に利益よりもウェルビーイングを優先する」とした回答者は半数未満(47%)にとどまり、経営陣の回答より20ポイント低いことがわかった。特に「AIツールが明確な指針や倫理、ガイドラインと共に導入されている」と回答した経営陣は67%である一方で、マネージャー以下の従業員はわずか48%と認識には大きなギャップが見られた。
AIに関する認識の違いは、テクノロジーが各自の業務に及ぼす影響に対する認識を反映したものとなっており、AIに対してポジティブな感情を持つ回答者の割合は、経営陣(54%)とマネージャー以下の従業員(32%)との間で22ポイントの差が生じている。

AI導入に関する期待:従業員は仕事の量より質を重視している
AIを導入すれば一人ひとりがこなせる業務量が一気に向上すると期待しているリーダーは、その認識を改める必要があるという。AIによって節約した時間を追加的な業務に充てたいと考えている従業員は12%に過ぎない。大半は効率の向上(54%)か仕事の質の向上(49%)を重視しており、世界的に見ても日本の従業員は「AIによって節約した時間を効率と質の改善に使う」と回答する傾向が高くなっている。それでも従業員の21%はAIを使うことで新しい業務に取り組めるようになると考えており、職場でのAIの導入方針に関するコミュニケーションの必要性が明らかになっている。

従業員エクスペリエンスとAI導入との関連性
職場で有意義な体験(エクスペリエンス)を得ている従業員は、エンゲージメントが高い傾向があるという。彼らはAIを導入する上司の決断に信頼を寄せ、導入に期待し、AIをより頻繁に利用しようとする。エンゲージメントが低い従業員とは対照的な行動をとるとのことだ。
良好な従業員エクスペリエンス(期待通り以上の体験)をしている従業員の傾向
- AIを導入する上司の決定に信頼を置く傾向が3.9倍高い
- AIが自分の仕事に与える影響に対してポジティブなイメージを持つ傾向が2.2倍高い
- AIを週に1回以上利用する傾向が2.7倍高い
会社・組織側が従業員向けサーベイなどを通じて、従業員の声に耳を傾ける頻度もAIの受容度と相関が見られる。
従業員が月に1回以上サーベイを通してフィードバックを会社・組織に提供する機会がある場合
- 2年以上フィードバックを提供していない従業員と比較して、上司への信頼とAIに対する肯定感が1.8倍高い
- AIを毎週利用する傾向が2.3倍高い

AI導入と活用を成功に導くためのヒント
- AIツールの使用目的と目標に関する意思統一:AIの使用目的と期待値について、早い段階から共通理解を持つことが重要。明確に認識合わせをすることで、後々起こる可能性のある問題を未然に防げるという。
- トレーニングを実施して従業員をサポート:リーダーがルールや方針を明確化することに先行して従業員がAIを導入するため、運用、セキュリティ、財務の面でリスクが生じると述べた。このギャップを効果的に埋めるには、組織はしっかりとしたガイドライン、指針、倫理、トレーニングを提供する必要があるという。
- 社内AI推進担当者を支援:AI推進担当者を従業員の中から指名して、AIツールを特定の業務に効果的に活用する方法を率先して試してもらい、周囲に共有するように依頼。これにより、方針を遵守しながら導入の促進が大いに進展するとしている。
- 仕事に適したAIツールを利用:AIの導入は慎重に行う。利用可能なツールを慎重に評価して組織特有のニーズに最適なものを選ぶが、選定プロセスにはそのツールを直接利用する従業員にも必ず参加してもらう必要があると述べた。
- 人事とITを連携:人事とIT部門の連携は成功に不可欠。IT部門は組織が適切なツールに投資できるようサポートし、人事は従業員の教育、職務定義を行いツールを効果的に使用できる環境を整えるべきとしている。
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