ロジカルなストーリー展開が“一瞬”で崩れる瞬間
過去3回において、「ロジカルに考える」ために必要な要件でもあり、多くの失敗例が潜む落とし穴について紹介してきた。今回は、再度スタート地点に立ち返り、「論点が明確、適切に設定されていること」について考えてみたい。
前回に続き、私が留学生向けの「課題解決」授業を持つ横浜国立大学での実話から始めたい。
海外の他大学からの留学生や、外国人新入生から成るクラスであることもあり、身近な共通テーマを挙げてみた。
横浜国立大学が、学びの場として最善の選択肢である
という主張を、「ロジックツリー(論理を構造化したもの)」で作り、それに沿ってプレゼンしてみてください、というものだ。
そこまでの授業で扱った、「誰の視点で語るか」や「漏れなくダブりないように関連する要素を考慮してみよう」といった基本に沿って、それぞれのグループがアイデアを出し、議論しながらポイントを集約していく。ここまでは、想定通りのプロセスだ。
ここから各グループの発表が始まり、様々な切り口から主張を支える根拠の羅列が始まる(ちなみに、全部網羅的に話そうとするので当然指定したプレゼン時間は軽くオーバーする。これは改善が必要)。
「学生の視点から」「教員の視点から」「その他の人の視点から」など、ステークホルダー毎に内容を整理し、それぞれの視点からの根拠が示される。
多くは以下のような意見だ。
- 横浜は国際的な都市であり、便利で魅力的な街である
- 学生や教員に多様性がある
- 国立なので学費も比較的低く抑えられる
- 授業の選択肢が広い
- etc
このプロセス自体に大きな問題はない。そして個々の意見を見れば、それ自体間違っていたり、否定されるものでもない。
しかし聞く側は、いずれもプレゼンの早い段階で、「ああ、この主張には合意できないな」という結論を出さざるを得ないことにすぐ気づく。
それはなぜか。