GeminiにNotebookLM、知財業務現場での活用のリアル
では、特許明細書(特許出願の際に特許庁に提出する書類の1つで、特許を取得したい発明の内容を詳細に説明するもの)の翻訳における生成AI活用はどうか。島津製作所では、複数の生成AI製品と、翻訳会社の翻訳精度を比較する検証を実施した。
その結果、「OpenAI o1」と「Gemini」が最も優れた性能を示した。これら2製品では、英語翻訳で起こりやすい冠詞「a」と「the」の使い分けのミスがほぼ発生しないなど、極めて高い翻訳精度が確認できた。

しかし、弱点も浮き彫りになった。図面が挿入された文書を翻訳する際に、用語の表記揺れや文章の段落が前後することなどが起きやすいためだ。
そのため、島津製作所では特許明細書のテキストと図面を分けて翻訳するなど、プロンプトや運用面の調整を加えることによりハルシネーションの低減を進めている。

京セラでも生成AIを活用した特許明細書の翻訳に取り組んでいる。こちらでもプロンプトを調整するなどして翻訳の精度向上を進めているが、竹口氏はそうした取り組みのなかで、翻訳の元になる日本語の文章がAI翻訳の質に大きく影響していると感じるようになったと話す。
「当社では明細書作成のガイドラインを策定していますが、ガイドラインに沿って日本語の明細書を確認し、修正することは現状、人間が行わなければいけない状況です。そこで、この日本語の明細書を生成AIにより修正をすることでAI翻訳の質を向上させたいと考えています」(竹口氏)
次にレクシスネクシス・ジャパンの齋藤氏は、OAでのAI活用について登壇者に尋ねた。

京セラでは通知内容の処理にGoogleの「NotebookLM」を活用している。NotebookLMの音声概要機能を利用すれば、難解な判例などを音声でわかりやすく解説してくれるため、拒絶通知の内容や論点の理解が進みやすいのだという。近年、次々とリリースされる生成AI製品だが、業務の性質や目的に応じて適した製品を活用するのがポイントのようだ。