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生成AIが人類史上2度目の認知革命である理由──任せるタスクの棲み分け、背景知識による大幅な精度向上

ゲスト:株式会社Algomatic 代表取締役CEO 大野峻典氏

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生成AIの精度を大幅に変える「背景知識」

栗原:具体的に、背景知識とはどのようなものでしょうか。

大野:私は大まかに「常識」「専門知識」「カンペ」の3つのイメージに分類しています。「常識」とは、専門的には「事前学習」と呼ばれるもので、基礎となる、義務教育的な知識のようなイメージです。人間にたとえるなら、日本国内では「郵便ポストは赤色」「信号が青色に変わったら横断歩道を渡る」といった、基本となる知識を指します。

 次に「専門知識」は、「ファインチューニング」と呼ばれるものです。これはある特殊なタスクを実行するために必要な知識です。人間にたとえると、司法試験を受験するために法律の勉強をしたり、医師免許を取得するため医学の知識を学んだりと、特定の仕事に従事するための知識を指します。

 3つ目が「カンペ」。その名のとおり、参照できる箇所にある知識のことです。専門的にはRAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術がこれに関連したものです。AIを有効活用するには、これらの異なるタイプの3つの知識獲得の方法を駆使し、タスクに必要な背景知識を補完する必要があります。

生成AIの精度を大幅に変える背景知識
生成AIの精度を大幅に変える背景知識/クリックすると拡大します

栗原:生成AIに仕事を任せるには、思考の前提となる知識が重要だということですよね。

大野:そうですね。そのため、私はこれからの時代はAIエンジニアだけではAIサービスを開発することは難しいと思っています。タスクの実行に必要なドメイン知識を持つ人物の協力が必要不可欠だからです。

 つまり、一般的に「職人」と呼ばれるような方の介在価値が今後さらに高まっていくでしょう。実は先日、知人の編集者と「ライターAI」を開発してみたのですが、私の目にはかなり質が高いアウトプットを出せたように見えたものの、編集者の視点からはまだまだ不十分とのことでした。読者を惹きつけるための描写力や構成力に課題が残ったそうです。

 こうした「描写力」や「構成力」を言語化してAIを指南するには、職人的な編集者の協力が絶対に必要でしょう。これからのAIサービス開発には、エンジニアなどの「技術者」に加えて、専門的なスキルを有する「職人」も求められる時代になると思っています。

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「多元性(プルラリティ)」から生成AI時代の社会を考える

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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