KPMGコンサルティングは、製造業でAIを活用している企業に向け課題やアプローチなどをまとめたレポート「Intelligent manufacturing -AIを活用したものづくりプロセスの高度化」(日本語版)を発表した。

1.主な調査結果
93%が「AIは不可欠」と回答、競争優位の必須条件に
93%の回答者が、AIは競争優位を高めるために必須条件であると認識。さらに、20%がAIをすべての部門における中核的な要素として位置付けており、26%がAIを組織文化や業務に取り入れている。
74%が機械学習を導入、67%がRPAと統合
74%の組織が機械学習を利用しており、72%が予測分析を活用している。業務の自動化でもAIの活用が進んでおり、67%がAIをRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と統合。特に、67%がエージェント型AIを利用しており、20%がその用途のさらなる拡大を計画している。
77%が今後1年でAIへの投資増加を計画
AIへの投資は加速しており、36%の組織が IT予算全体の10%超をAIに割り当てている。将来的には、77%が今後1年間でAIへの投資を増やす計画であり、71%が10%を上回る増額を見込んでいる。
AI実装では56%がデータ関連の問題、40%が人材面の課題に直面
56%の組織がAIソリューションの実装に際してデータ関連の問題に直面しており、40%がスキルギャップや変化への抵抗など、従業員に関する課題を挙げている。その対応として、80%がAIツールに関する知識とスキルのトレーニングに投資。
96%が業務改善を実感、62%が10%超のROIを達成
AI導入により、96%の組織が業務改善や効率向上を達成しており、45%が財務面での改善を経験。さらに62%が10%を超える投資利益率(ROI)を達成している。
65%が管理体制を確立、リスクは特定され管理されている
65%の組織がAIのリスク管理に対して体系的な管理体制を整備している。綿密なプロセスでリスクを特定し、評価の上、リスクを軽減。また、57%がデータプライバシー、44%が規制コンプライアンスに重点を置いている。
78%が環境目標を優先、サステナビリティが懸案に
回答者の78%がサステナビリティ目標の達成をAIよりも重要であると捉えている。また、85%の組織はAIによるエネルギー需要の増大に対応するための戦略を策定。AIの導入が長期的なサステナビリティ目標と整合するように取り組みを進めている。
2.AIの導入と長期的価値創出に向けたリーダーの視点
製造業でAIから最大限の価値を創出するためには、AI戦略の策定や導入後の変化などを綿密に検討することが重要となる。AIの導入と長期的価値創出に向けたリーダーの視点は主に次の4つ。
- コアコンピテンシーに整合する形で価値を生み出していくようなAI戦略を策定する
- AIトランスフォーメーションのロードマップに信頼を盛り込む
- 持続可能なテクノロジーとデータ基盤を生み出す
- 人とAIの協働関係を高める従業員文化を構築する
3.インテリジェンス化された組織の構築に向けたアプローチ
製造業でのAI導入を成功させるためには、全社レイヤー(Enterprise)、部門レイヤー(Functions)、そして基盤レイヤー(Foundations)の3つのレイヤーによる多層的なアプローチが必要。また、Enable(能力付与)、Embed(組み込み)、Evolve(進化)の3つのフェーズを段階的に進めることで、AIを活用した顧客中心のトランスフォーメーションを実現できる。

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