リクルートマネジメントソリューションズは、300名の人事担当者および管理職層を対象に、「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(2025)」を実施し、分析結果を発表した。
人事・管理職ともに課題感を持つ人の割合が高い
- 人事・管理職ともに70%以上が「管理職(中間管理職)に関する課題感」を持ち、共通する課題感は「管理職候補の不足」。その他、管理職は特に「管理職の負担増大」、人事は「管理職が期待に応えられていない」「管理職育成」「女性管理職比率」に課題を感じる割合が高い(図1、2)
- 課題に感じていることを具体的に質問すると、共通して課題を感じる割合が高かったのは「管理職候補の不足」。
- その他、管理職は特に「管理職の負担増大」、人事は「管理職が期待に応えられていない」「管理職育成」「女性管理職比率」に課題を感じる割合が高かった。


人事・管理職ともにマネジメント業務の中で「メンバー育成」を重視
- 人事が管理職に期待していることと、管理職が管理職として重要だと考えている役割のトップは、ともに「メンバー育成」。管理職が日々のマネジメント業務で難しいと思っていることのトップも「メンバーの育成・能力開発をすること」(図3、4)
- その他の項目は人事と管理職で差があり、管理職は「業務改善」が39.3%、「人間関係の円滑化」が30.7%と、他の選択肢と比べて重視することとして選択した人が多かった。
- 管理職が回答した「目標達成」に関する項目について、重要だと考えている役割の設問では23.3%(図3)、難しいと思っていることの設問では30.0%(図4)と、先述の選択肢と比較して低い。管理職がいかにメンバーのモチベーションやリテンション、協働を重視し、かつ難しさを感じているかがうかがえる。

図3:管理職に期待していること【人事担当者】/管理職の役割【管理職層】

人事が実施を検討しているサポートでは「負荷軽減の取り組み」が最多
- 人事がすでに実施している管理職向けのサポート施策で30%を超えたのは「上司や人事による個別サポート」と「研修の実施・eラーニング機会の提供」。
- 実施検討中で最も多かったのは「負荷軽減の取り組み」(図5)。人事が管理職のマネジメント業務自体をサポートする意欲を高めていることがうかがえる。

会社からは「自律共創型組織」への移行を求められている
- 60%以上の人が会社から「自律共創型組織(チームで考え、柔軟に価値を生み出す組織)」への移行を求められており、本人も「自律共創型組織」になる必要性を感じている(図6) 。
- 2023年の同調査と比較すると、自分の所属組織における必要性と取り組みを問う設問で「そう思わない」の選択率が微増。全体的には「自律共創型組織」への移行が求められていることを実感しているが、自分の所属組織における移行の必要は個別に判断し、現時点では移行を積極的に行っていないケースも想定される。

管理職にとって「自律共創型組織」の難しさは「仕事の割り当て」「新しいやり方へのチャレンジ」など
- 管理職に「自律共創型組織」運営の難しさを聞いたところ、特に「仕事の割り当て(メンバーの強みと今後のキャリアを考慮した仕事を割り当てる)」や「新しいやり方へのチャレンジ(これまでの成功パターンにとらわれることなく、新しいやり方を試す)」「自発的な情報共有や相互サポート(メンバー同士の自発的な情報共有や相互のサポートを促す)」が高かった。「自律共創型組織」として機能させるために、まず必要なビジョンの浸透だけでなく、その後実際にメンバーにどのように動いてもらうか、という部分で難しさを感じている様子がうかがえる。

「自律共創型組織」への移行の成果ではチームワークの向上が1位に
- 自律共創型組織運営への取り組みによる成果と感じていることでは「チームワークの向上」が1位となった。「自律共創型組織」への移行を目指して取り組みを進めると、まず目に見える成果としてチームワークが向上する可能性が高いということがうかがえる。一方で、チームワークの向上はあくまで新価値創造の手段であることをふまえると、今後は「現場から新しいアイデアが出てくるようになった」の選択率が伸びることが期待される。

企業が今後管理職に増やしたいのは「企画開発タイプ」「創造革新タイプ」
- 既存の管理職では、「組織管理タイプ」と「実務推進タイプ」が多い傾向にあった。また、企業が今後増やしたいのは「企画開発タイプ」と「創造革新タイプ」。
- 「創造革新タイプ」は既存の管理職には5%程度と極端に少なく、これから増やしたいと考える人事・管理職が36.7%存在していた。変革を期待して社外から招く「創造革新タイプ」が既存の組織の中に入り込んでいくことが求められるなかで、活躍できるポジションや環境を整えていくことが必要になると考えられる。
- 今後の管理職に求められるであろう力を尋ねたところ、創造革新タイプに欠かせない「イノベーション推進力」が中位。「多様性に富んだ部下をマネジメントする力」「部下のキャリア形成を支援する力」「社内での連携を強化するための調整力」の方が高い結果となった。これからの管理職には、これまで以上に多岐にわたる能力が求められそうだといえる。特に「多様性マネジメント」の選択率は人事担当者と管理職層では大きく乖離。管理職層が部下と日々接する中で、今後を見据えて伸ばすべき力であると捉えている可能性が高い。


管理職の今後のキャリアは「中間管理職として継続して成果をあげる」がトップ
- 管理職が自身の今後のキャリアをどう考えているかを質問した結果、多い順に「中間管理職として継続して成果をあげる」「上級管理職・経営層を目指す」「マネジメントをしながら、スペシャリストとしても専門性を磨き続ける」「管理職ではなく、専門職としてスペシャリストを目指す」「今後のキャリアについてはあまり考えていない」という結果になった。これは、一度管理職になったとしても、スペシャリストに戻るという複線型の人事制度が名実ともに機能するようになっていることが関係していると考えられる。

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