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「どう予測するか」ではなく「どう決めるか」が競争優位に 最適化AIで合理的な一手を導くコツ

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 AIと聞くと、機械学習やディープラーニング、最近では生成AIを思い浮かべる人が多いでしょう。これらは予測や生成に強みを持ち、様々なビジネスで成果をサポートしてきました。しかし、AIの進化はそこで終わりません。DXの推進によって予測に必要なデータと基盤が整った今、企業にとっての課題は「どう予測するか」ではなく「どう決めるか」へと移っています。次の主役は、意思決定を担うAI──最適化AIです。本稿では、最適化AIが今必要な理由と、導入の方法を解説します。

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勘と経験だけで最適な判断は不可能

 AIはこれまで「未来を読む」技術として進化してきました。需要予測や異常検知、生成AIを使った自動コンテンツ生成などが、その具体例です。これらは企業活動の効率化に大きく貢献しました。

 しかし、予測や生成の次には必ず「では、どう動くか」という意思決定の必要が生じます。

・需要が高まるなら、どの商品を、どこに、どれだけ供給するか
・天候が崩れるなら、どの配送ルートに切り替えるか

 このような判断を、もはや人間の勘と経験だけで最適に行うことは不可能でしょう。なぜなら選択肢が膨大に増え、制約条件が複雑になり、判断に費やせる時間がどんどん短くなっているからです。そこで登場するのが、複数の条件を考慮し、最も合理的な一手を選ぶAI=最適化AIです。

 最適化AIとは「複雑な制約条件の下で、目的の最大化/最小化につながる意思決定を自動化する技術」です。最適化の例として、旅行の計画を挙げましょう。限られた日程と予算で複数の観光地を効率的に回るにはどうすれば良いか。私たちは、移動時間やコストを考慮して、最も良いプランを立てます。これが最適化の基本的な考え方です。

 ビジネスではこれを大規模かつ高速に実現します。物流、在庫配置、人員シフト、広告予算配分……。最適化AIは、このような多変数で制約の多い問題に対して、瞬時に答えを導くのです。

制約だらけでも利益を確保するために

 なぜ今、最適化AIが求められるのでしょうか。理由は大きく四つあります。

1.DXで予測の土台が整ったから

 ここ数年のDX推進にともない、企業ではデータの収集や予測モデルの導入が進められてきました。POSデータ、IoTセンサー、クラウド基盤の整備により「まずは予測をする」文化が浸透しています。

 しかし、これらの基盤が整った次に生まれる問いは「予測結果をどう使うのか」です。予測は意思決定の前提条件に過ぎません。その一歩先にある「複雑な条件を踏まえて、最も得する選択をどう導くか」が、現在の焦点です。

2.属人化と人材不足が深刻化しているから

 日本の企業は長年、ベテランの経験と勘に依存してきました。これはこれですごいことです。日本の現場の能力は、海外の現場を遥かに凌ぐと筆者は感じています。しかし、人口減少でベテランは退職し、新人採用の数も減っている昨今。暗黙知を継承する仕組みがなければ、業務はブラックボックス化し、品質の維持すら困難になるでしょう。このような背景から最適化AIによる「誰でも同じ判断ができる仕組み」が求められています。

3.不確実性が高まっているから

 現場では「需要がこうだから計画はこう」という単一シナリオで意思決定されることが多いですが、実際の意思決定には不確実性がともないます。「需要予測が外れた場合」「天候が急変した場合」など、複数のケースを人間が頭の中で想定して計画を立てるのは不可能です。その点、最適化AIは数十~数百のシナリオを一瞬でシミュレーションできます。

4.企業経営の制約が増えているから

 働き方改革にともなう労働時間の制限、CO₂の削減義務、ESG対応など、企業経営の制約は増える一方です。制約が増えれば、企業が自由に選択できる幅は狭まり、利益確保は難しくなります。「制約だらけの中で、どうすれば利益を守れるのか」この答えを導くのも、最適化AIの役割です。

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最適化AIで合理的な一手を導くコツ

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この記事の著者

梅田 龍介(ウメダ リュウスケ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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