ROEは株主のための指標。その理由は説明できるか
ROEとROICのそれぞれの指標の考え方について見ていきましょう。まず、ROEは「当期純利益÷自己資本」から計算されます。たとえば、自己資本が100億円、当期純利益が8億円だった場合のROEは8%です。これはB/SとP/Lの観点から見ると、以下の図表の通りになります。
自己資本を企業へのインプットとすると、企業活動を経てどれだけの当期純利益が生まれたのかを見る指標がROEなのです。このROEについて、P/LのステークホルダーとB/Sのステークホルダー(利害関係者)の観点から見ると、以下、図表のようになります。
ここからわかることは、B/Sの自己資本もP/Lの当期純利益も共に株主に関する勘定科目ということです。つまり、ROEは株主のための指標なのです。このROEは、有価証券報告書の1ページ目にも5年分記載されているため、上場企業の場合、すぐに確認することができます。たとえば森永製菓の場合、2025年3月期のROEは13.5%になります。
有価証券報告書の数値をそのまま確認することもできますが、自ら再現できることが重要です。計算式は以下です。
- 親会社に帰属する当期純利益÷(純資産−非支配株主持分)の期首・期末平均
分母においては純資産から非支配株主持分を控除し、前年度と今年度の平均値(期首期末平均)を使う点が実務上のポイントです。実際に計算をしてみると、有価証券報告書の数値と一致することがわかります。
なぜROEよりもROICが重視されるのか
近年ではROEに加えて、ROICも重視される傾向があります。なぜROEだけではなく、ROICも見る必要があるのでしょうか。ROEの計算式は先程も解説したように当期純利益÷自己資本で計算することができます。このROEの式に売上高と総資産を入れることで、以下のように分解できます。これをデュポン分解と言います。
この分解を見ると、ROEは事業の強さだけでなく、資本構成の変化にも大きく影響されることがわかります。すなわち、この式からわかるように「総資産÷自己資本」で計算される財務レバレッジを上げることで、ROEは上げることができるのです。財務レバレッジを上げる方法は、自社株買いを行ったり、借入を増やしたりすることで可能です。つまり、オペレーションの改善や事業戦略ではなく、財務戦略だけでROEを上げることができるのです。またROEを経営目標数値とした場合、現場に落とし込むことが難しいことも課題としてあげられます。なぜならば、上述したように、オペレーションを改善しなくてもROEは上げることができるからです。
これに対して、ROICは、分子が営業利益ベースで、分母が事業に投下された資本となるので、事業そのものの収益力を図ることができます。つまり、事業部ごとにROICを測ることができるので、現場にも落とし込みやすいのです。加えて、ROICは以下のようなROICツリーに分解することができます。
ROICツリーを見ると、ROICを上げる方法は大きく2つに整理できます。1つ目は利益率を高めること。すなわち原価率や販管費率を改善することです。2つ目は資本効率を高めること。売掛金回収を早める、在庫期間を短縮する、資産回転率を上げるといった施策です。
まとめると、ROICは、「現場で何をすべきか」を構造的に示してくれる指標なのです。このように、ROEのデュポン分解では抽象的だったことがROICでは実務で何をすれば良いのかイメージできるようになります。
