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INNOSIGHT流イノベーションの興し方

「マーケティング課題」を解決する、クリステンセン教授の“Job to be done”とは?

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ミルクシェイクを「雇う」のはなぜか?

 有名なミルクシェイクの事例がある。かつて、米国のマクドナルドがシェイクの売上を伸ばせずに苦労していた。膨大なマーケティングデータの分析から代表的な顧客像を割り出し、そうした顧客の要望を尋ね、シェイクの味を改良してみたりもしたが、売上向上にはつながらない。
 そこで、クリステンセン教授らはミルクシェイクが解決するジョブの調査を開始することにした。店に来るお客さんを朝から晩まで観察すると、意外なことに、多くの男性が早朝に車に乗って一人で来店し、ミルクシェイクだけを買っていくことがわかったのだ。調査チームはミルクシェイクを買った人に、お客さんも考えたことがないような質問をしてみた。「どんなジョブを解決したくてミルクシェイクを“雇い”ましたか?」。そのような会話を多くの顧客としたことで、ミルクシェイクは通勤の退屈しのぎになっていることがわかった。車での通勤は長く、単調だということには不満を感じていたが、聞かれるまで通勤客自身も退屈をしのぐためにシェイクを買っているとは気づいていなかったのだ。それまでのマーケティング調査は商品に対することばかりに向けられていて、その商品がどんな目的で利用されているのかをまったくとらえていないものになっていた。

競合は別の業界

 このようにミルクシェイクが解決しているジョブがわかると、通勤客がミルクシェイク以外にも、バナナやドーナツを退屈しのぎに買っていることがあることが明らかになる。なんと、他店のミルクシェイクや飲み物ではなく、バナナやドーナツ、自宅にある菓子やフルーツなどと無意識に比較し、購入していたのである。
 さらに、ミルクシェイクがこってりとしていてストローから一気に飲みにくいため、通勤のお供として最後までもつことがわかった。また、片手で飲みやすく、食べ物のように運転の妨げにならないことも、好まれていた。このように、お客さんが利用する場面を理解することで、ストローをほんの少し細くし、さらに長持ちさせるようにしたり、車から降りずに簡単に買えるようなスタンドを設けたり、と売上を伸ばす方策を幅広く出すことができる。

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津田 真吾(ツダ シンゴ)

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