まず可能性を知ることから始めよう
ドローンの規制に関する法案が9月に通り、12月10日に施行された。これを機に誰もがどこでもドローンを飛ばせるという状況ではなくなった。しかしドローンの活用の可能性はまだまだ広い。今回のイベントは、仙台市に本社を構えるIT企業トライポッドワークスの佐々木賢一社長とマイクロソフトの執行役員でエバンジェリストの西脇資哲氏が中心になっておこなわれた。
ドローンには非常に広がりのあり、これを我々何とか活用したいを思っていました。4月に総理官邸に落っこちたものですから、非常にやりにくい状況が出てきました。12月10日からは空港の周辺とか150m以上の上空だとか、DID地域といって町が密集している地域とか、というところではできないということになっています。こういう規制の中で、我々が何ができるかっていうことをもう一度考えてみようじゃないか、まずは知ることから始めたらどうだろうということで、今日はドローン飛ばしをしょっちゅうやっておられる佐々木社長とマイクロソフトの西脇さんと、ドローン関係者の皆さんに来ていただきました。(仙台市副市長 伊藤敬幹氏)
仙台市は国家戦略特区に指定されていることもあり、規制の限界を超えてチャレンジできる可能性がある。行政としてドローンの可能性を探りたいと副市長は言う。
ドローンはわれわれから見るとスマートフォンと同じITツールです。ややもすると最近はネガティブな報道が先行してしまってますが、可能性に満ちています。特に東北のような地方では、農林水産といった一次産業、災害対策や土木から観光でいろんな活用法があり、行政の方や一般市民の方にぜひ知っていただきたい。(トライポッド 佐々木賢一社長)
空の産業革命
マイクロソフトの執行役員の西脇資哲氏が講演。西脇氏は最近では、マイクロソフトの活動とは別に、ドローン・エバンジェリストとしての活動にも積極的だ。
ドローンは空の産業革命です。12月の10日には、法律は航空法の改正である程度の規制が入りますが、規制を成約としてとらえるのではなく、可能性を後押しするものだと思います。新しい産業が広まるときには、何かしら事故や事件や悪いニュースや阻害要因や少し恥ずかしい事態が起きます。どんな技術でもそうです。ただそれをどうクリアしていくかっていうことが重要なんです。農業についていえば、日本では無人ヘリによる農薬散布が普通に行われています。私たちが口にするお米の60%以上は、ドローンによる農薬散布で作られています。つまり私たちの衣食住のうちの食ですら、ドローンがいないと成り立たないのです。
この日、西脇氏は自身が所有するドローンを10機、車で東京から5時間かけて仙台に持ち込んだという。代表的なドローンを実機を見せながら紹介した。ヨーロッパのパロット社のBeBop Drone、中国のDJI社の4枚ローター機(クワッドコプター)、6枚ローター機(ヘキサコプター)など。中国メーカーが現状では多い中、西脇氏が注目するのは、ソニーとZMP社の合弁会社AeroSense、米国WIREDの編集長を務めたクリス・アンダーソンの3D Robotics社だという。
中国がほとんどのシェアを持っていますが、日本もソニーとZMP、アメリカではクリス・アンダーソンという人が、“空の産業革命が始まる”といって始めた会社3Dロボティクス社などが注目です。ヨーロッパ、中国、日本、そしてアメリカ、もうプレイヤーも機体が揃った。あとはそれをどう活用するかです。
航空法の改正によるドローンの規制についても、西脇氏は前向きに捉えてこう語る。
今後は、ドローンの機体が登録制になるか、あるいは私たちのようにドローンを飛ばす人たちが登録免許制になるでしょう。でも冷静に考えたら、車だって登録制であり、許可制であり、それをもとにマナーを守ってるわけですから、やはり空の産業革命も、それと同じであっても私は全然構わないと思うんです。それで何ができるかっていうことのほうが大変重要だと考えております。
ドローンが実現するイノベーション領域
西脇氏は、様々なドローンの活用の例を紹介した。以下がその一部である。
空撮、アート、CM、観光、スポーツ中継、報道
観光資源を持つ地方は空撮などで地域の魅力を発進。たとえばスキー場でのケガや登山での事故などに、ドローンでのパトロールや救援、救命活動など。
測量、土木、建設
測量の自動化、効率化、3D地図の作成や建設作業の支援などでの活用で、「スマートコンストラクション」を推進する。
農業、工場、「精密農業」
センサーやカメラ搭載で、作物の生育状況や実り状況、生育状況を測ることで生産性の向上と省労働力化による「精密農業」という形に変わってくる。
その他、監視、防犯、パトカーとの連携、荷物の配送など展開領域は数多くある。自動姿勢制御や、自動航行、さらにクラウドやビッグデータ、機械学習やAIと連携することで、ビジネスへのインパクトを生み出すと西脇氏はいう。ドローンはITであり、スマートフォンがある意味で、社会を変えたように、ドローンもイノベーションの可能性を秘めている。
講演会の後、副市長をはじめ行政関係のメンバー、官公庁の職員による実機の講習会が仙台市民球場でおこなわれた。晴れわたった球場の空の下で、たくさんの人が実際にドローンの操縦を楽しんだ。